新型コロナウイルスとの共存時代。思うように外出できず、仕事や学校などの環境が大きく変化したことで、心が疲れたと感じたとき、私たちはどうすればいいのでしょうか。真言宗寺院の住職である傍ら、心理カウンセラーとしても活動する羽鳥裕明さんがDUAL世代に向けて語ってくれました。

心の在り方の大切さを説く「依正不二」の教え

 新型コロナウイルスの問題で生活が大きく変わったことで、心が疲れている方が多くいらっしゃいます。

 私たちの「心」と身の回りの「環境」はとても密接な関係にあります。仏教の教えに「依正不二(えしょうふに)」という言葉があります。これは「環境とは、自分と別にあるものではない。周りの出来事は全て自分自身の心の状態が投影されたものである」という意味です。弘法大師空海は、この教えを「境(きょう)は心に随って変ず」つまり「環境は人の心によって変わる」と表現されました。

 現在の状況に置き換えると、新型コロナという環境の変化によって私たちの心は不安になりました。そしていま、私たちはコロナ対策をするなど環境を変えることで心の平安を得ようとしています。しかし、感染がなかなか完全に収まらない状況を見ると、環境を変えるだけでは時間がかかってしまいそうです。

 ですからまずは、心の在り方を少しでも変えることが大切ではないかと思うのです。心を変えることで自分を取り巻く環境を変える。今この状況だからこそ、自分自身の心と向き合ってみてはいかがでしょうか

今だからこそ、自分の心と向き合ってみよう
今だからこそ、自分の心と向き合ってみよう

 私たちは今、働き方改革など、数カ月前には誰もが「できないよ」と思っていたようなことができています。コロナという環境の変化が人の心に変化をもたらしたのです。であれば、今度は逆に心を変えることで、自分を取り巻く環境をよいものに変えることもできるはずです

 人は「制限させられている」と受動的になると苦しみを覚えやすくなります。しかし「家族の健康を守るために自ら考えて実践し、制限しているのだ」と能動的に捉えると苦しみが軽減して前向きになれるのではないでしょうか。能動的な心から発する行動で環境を変え、それによって心がさらに良い方へ向かう、良い循環を起こせるのではないかと思います。

 とはいえ、「ピンチをチャンスに変えよう」と言われても、「そんな力は出ないよ」ということもあるかもしれません。そんなとき、心の荷物をそっと下ろすための方法を、紹介していきましょう。