無意識に抱えた心の荷物を「意識化」する

 心の在り方という意味では、無意識に抱えている心の疲れを「意識化」することも大切です。人は薪を背負って山道を歩いている時に、薪を少しずつ増やしていくと、だんだん重くなっていることに気が付くことができません。そのうち、なぜこんなに疲れているのか、荷物が重いせいなのか、坂道がつらいからなのか、分からなくなってしまいます。

 心の荷物を一旦降ろすために、子どもが寝た後など、1日のうち10分だけでも「空白の時間」を持っていただきたいと思います。延々と続く家事や育児、仕事などに、自分で区切りを付けるわけです。

 おすすめしたいのは、スマホの電源を切って、静かな空間で「自分の呼吸を数える」作業です。これは仏教の瞑想の仕方の「数息観(すそくかん)」というものです。

 まず、鼻からゆっくりと息を吸って、お腹に溜めてから「ハーーッ」と口から息をゆっくりと長く吐き出す、それを繰り返しながら、自分の呼吸の回数を数えます。数えることで、「息をしていること」に意識を集中でき、他のものから自分の心を切り離すことができます。好きなところまで続けて、好きなところでやめていただいて結構です。

 呼吸だけに集中することで、それ以外の荷物を降ろすことができ、自然と「自分はこういうことに疲れていたんだな」と気づきを得ることができます。そして心の荷物が何であったのかに気が付くと、今度はそれをどうしたらよいかという対処法が自然と見えてきます。人は日々焦りや不安がある中、なかなか自分の心に注目することができません。まずは、呼吸を数えて落ち着き、自分の心に耳を傾けることを試してみてはいかがでしょうか。