言葉に出して伝える努力をしてみよう

 夫婦間のコミュニケーション。大事とは分かっていても、「きちんと気持ちを伝えられない」「在宅勤務で話す時間が増えたら、ケンカも増えた」という人もいるのではないでしょうか。「人は身近な関係であったり、血がつながった親子であったりするほど、『言わなくても分かってほしい』と、言葉で説明することをやめてしまいます。自分のことを分かってほしいなら、ちゃんと言葉に出して分かってもらう努力が必要です」(熊野さん)。

 熊野さんはアドラー心理学の観点から、6つの改善ポイントを紹介してくれました(以下、「 」は熊野さんのコメントです)。

(1)挨拶をしっかりする
「親しき仲にも礼儀あり。おはよう、おやすみ、ごちそうさまなどの挨拶は相手の目を見て言いましょう」

(2)相手の状況を考える
「パートナーがリビングにいて、スマホを見ていたとします。そんな時に一方的にワーッと話しかけていませんか? もしかしたら、相手はスマホを見ながら、ものすごく重要なメールを送信するところだったかもしれません。職場なら相手に対して、『今、ちょっといい?』『後で5分もらえますか』と声かけしますよね。そうした適切な配慮を夫婦間でもできるようにしましょう」

(3)会話の目的を最初に伝える
「ダラダラと話すのではなく、最初に『○○について話したいんだけど聞いてくれる? アドバイスして』などと、会話の目的と要点をはっきりさせましょう。そうすれば途中で『聞いてるの?』と詰め寄ることもなくなります」

(4)共感ファースト
「夫婦はしょせん他人だから子育て1つとっても意見が割れるし、同意できないこともあります。そんな時には論破しようとせず、まずは共感を。アドラー心理学では、共感とはいったん自分の正義や価値観を脱ぎ去り、相手の目線で考えてみる状態をいいます。同意するかどうかではなく、まずは認め合いましょう」

(5)戦いから降りる
「(4)で意見が異なったとしても、夫婦が目指すゴールが同じ場合、到達経路に関してはお互いの自由を認め合いましょう」

(6)感謝の言葉を贈る
「ありがとう、大変だね、など相手に対して、思いやりの声かけをしましょう。ありがとうが最強ですが、忙しいパートナーに対しては『今、できることはある?』と聞くのもいいですね」

 林田さんは、「パートナーの価値観の確認」も重要だといいます。

 「例えば、育児・家事をきっちり分担する『量的公平感』を求める人がいる一方、分担にはこだわらず、感謝してくれたり、話を聞いてくれたりする『情緒的公平感』がほしい人もいます。私が知っているある夫婦は、育児・家事のタスクを100項目に分類してエクセルの表を作って毎日点数化。1週間の集計で夫婦のポイント差が少ないことに喜びを感じているそうです。人によって価値観が違うので、この際に確認しておきましょう」

夫婦のコミュニケーションを取り直すチャンスでもある。画像はイメージ
夫婦のコミュニケーションを取り直すチャンスでもある。画像はイメージ

 杉山さんは一般社団法人日本ほめる達人協会のメソッドを基に、「感謝の声かけをする際、事実をプラスすると、ありがとうの質が上がる」とアドバイスします。

 「単に『ありがとう』と言うよりも、『食事を作ってくれて、ありがとう』『忙しいのに、ありがとう』『眠いのに、家事をしてくれてありがとう』と伝えると説得力が増し、パートナーの自己肯定感も高まります。せっかく声かけをするなら、ちゃんと相手に届く言葉をかけたいですね」