緊急事態宣言が全国で解除されましたが、まだまだ「コロナ前」に戻ったとはいえない状況。思い通りにいかない生活の中で、家族や周囲の人にイライラすることがありませんか。大切な人に怒りをぶつけて自己嫌悪を感じたり、心が疲れたりしてしまったとき、どうすればいいのでしょうか。親子関係のアドバイスも行う日本アンガーマネジメント協会の小尻美奈さんが、イライラ・怒りとの上手な付き合い方について語りました。

怒りは人間が誰しも持つ感情

 新型コロナ感染拡大への恐怖や、子どもを見ながらのテレワーク……。DUAL世代にとって負担が続く中、「ささいなことでイライラしてしまう」という悩みを持つ人が少なくありません。そのことで自己嫌悪に陥ったり、疲れたりしている人もいるでしょう。でも、怒りは人間の自然な感情です。今のようにギリギリの状況では仕方のないこと。皆さん、十分に頑張っていらっしゃいます。怒らない人はいないんだ、と、まずは自分を認めてあげてください。

 とはいえ、よりよい家族関係・対人関係のためには、イライラや怒りとうまく付き合っていくことも大切です。なぜ怒りが生まれて表面化していくのか、もう少し詳しく説明しましょう。

 怒りが生まれるメカニズムは、ライターの構造に似ています。ライターの火が「怒り」だとすると、怒りのスイッチを入れる発火石の部分には、「こうすべきだ」「こうあるべきだ」という、自分の理想や常識、願望、欲求があります。「夫も家事をやるべきだ」「子どもはおとなしく勉強すべきだ」といった、自分の中での常識や願望、理想などが裏切られたときに、怒りのスイッチが入るのです。家族と一緒に過ごす時間が増えたことで、家族に守ってもらいたい「べき」が裏切られる機会も増え、これまで以上に怒りのスイッチが入りやすい状況になったと言えるでしょう。

怒りのスイッチ →「こうするべき」「こうあるべき」という、自分の理想や常識、願望、欲求など。怒りを燃やすガス →不安、心配、恐怖、ストレス、疲れなど。
日本アンガーマネジメント協会の資料をもとに日経DUAL編集部で作成

 怒りを燃やすガス(燃料)は、自分の心の中にあるマイナスの感情です。例えば、ストレス、疲れ、不安、心配、恐怖などです。コロナで健康や生活が脅かされている状況は、不満や恐怖心でこうしたマイナスの感情がたまりがち。一度怒りのスイッチが入ると、大きく燃えやすいのです。