自分の本当の気持ちを見つめる

 また、人間は、生きていく上で「自分が脅かされている」と感じると、怒ることで身を守ろうとします。今はコロナという状況で、自分や家族にとって何よりも大切な「健康」や「命」が脅かされそうな状態ですね。人によっては仕事や雇用も脅かされています。また、テレワーク中に子どもから話しかけられるとイライラするのは、「集中できる時間を奪われている」「大切な仕事を侵害されている」と感じているからでしょう。

コツ1:怒りの背景にある「本当の気持ち」を自覚する

 そこで意識してほしいのが、「子どもを仕事の邪魔だと感じるくらい私はストレスがたまっているんだな」と、自分の心のマイナスの状態を自覚することです。そして、なぜ怒りを感じたのか、本当はどうしてほしかったのか、奥に隠れている感情や欲求を見つめてみましょう。すると、「私は仕事を大切に思っているからこそ、困って(残念に思って)怒ってしまったんだ」「仕事中に声をかけてほしくなかったんだ」などと、本当の感情や欲求が見えてくるはずです。

「時間」や「空間」を奪われていると感じることも、イライラの原因になる
「時間」や「空間」を奪われていると感じることも、イライラの原因になる

 怒ることとは本来、感情をぶつけることが目的ではなく、相手に要望を伝え、改善してもらうことが目的のはずです。家族に怒りをぶつけた後で「あんなに怒る必要はなかったのに」と思ったら、まずは素直に「ごめんね、言い過ぎちゃった」などと謝るのが一番です。そして怒った理由を「ママ(パパ)はあなたにこうしてほしかった。悲しかったんだよ」などと伝えましょう。

コツ2:「本当はどうしてほしかったのか」を考えて、相手に伝える

 このとき、自分を主語にして、こうしてほしいという「リクエスト」や自分の気持ちを伝えることが大事です。この習慣をつけると、「うるさい!」と言いたくなったときも、「今から30分間は静かにしていてほしいな」というふうに、伝え方を変えられるようになります。

 自分以外の人が怒っているときも、その人の怒りではなく「リクエスト」に注目します。例えば、パートナーが子どもを感情的に怒鳴っていたら「何が嫌だったの?」「感情的になるのは分かるけど、してほしいことを具体的に教えてあげて」と伝えるといいと思います。子どもを怒ること自体を責めると反発を招きやすいので、避けたほうがいいでしょう。

 パートナーとの関係性によっては、このような話し合いをしづらい人もいるかもしれません。対面で話すのが難しいなら、メールや手紙など形を変えてリクエストを伝えてみるのはどうでしょうか。実際に、その方法で「そんなふうに悩んでいたんだね」と相手が理解してくれた事例もあります。