安倍政権はかつて「3年間抱っこし放題」とうたい、3年間の育児休業取得を打ち出したことがあります。3年間の育児休業を認めることが女性の就業を増やすのではないかという議論に基づくものでしたが、東京大学経済学部教授の山口慎太郎さんは、社会全体としては「1年の育休取得が、女性の就業率を引き上げるのに最も効果的」という結論に達したといいます。山口さんにデータ分析の結果について、詳しく聞きました。

3年に延ばしても就業率の押し上げ効果は1ポイント

 山口さんのデータ分析を踏まえたシミュレーションによると、育休が全く制度化されていない場合と比べて、1年間の育休があることで、出産5年後の女性の就業率は、50%から60%に10ポイント引き上げていると推計されます。しかし育休の上限を1年から3年に延ばした場合、就業率の押し上げ効果は1ポイントしか見込めないといいます(*1)。

 山口さんは「3年育休」の効果が薄い理由として、キャリアに長い空白ができてしまうのをためらう女性が多いこと、育児休業給付金は延長を含めても最長で2年しか支給されないという家計の落ち込み、子どもが1歳になると親側も保育園に預けることへの心理的な抵抗が薄くなることなどを挙げます。

 企業が女性の採用を抑制する懸念もあると山口さんは指摘します。現状では長い育休を取るのは、圧倒的に女性の方が多いためです。「女性が将来3年間職場から抜けてしまうリスクを考慮し、あらかじめ採用を控えるようになる企業が出てくるでしょう」

 1年未満で育休を切り上げる、という選択肢について考えてみましょう。0歳児保育は保育士を手厚く配置する必要があるため、社会にかかるコストは高額です。2017年の財政制度審議会では、0歳児1人当たりの保育費用は1カ月20万円を超えるとされました(*2)。1、2歳児になると、1カ月12万円程度まで下がります。つまり、保育コストの面から見ると、親に職場復帰を急ぐ事情がない場合は、1年間育休を取って1歳児クラスから復帰するほうが理にかなっているのです。

 東京などの「保活激戦区」では、認可保育園に入園するために必要な指数を上げるため、やむを得ず0歳児のときから認可外保育園に預けて仕事に復帰する親もたくさんいます。山口さんは「望んでいなくても1年未満で育休を切り上げざるを得ない現状は、社会的にも大きなコストがかかるということが分かるでしょう。待機児童の解消はそうした問題も解決します」と話します。

写真はイメージです
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  • 3年育休は選択肢として評価 実際に必要とする親は少ない
  • 高所得層に偏りがちな子育て制度の恩恵を見直す政策を

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