共働き家庭にとって、保育園はなくてはならない存在です。しかし、保育園に預け始めの慣らし保育の時期などに、子どもを預けることに後ろめたさを感じたり、「0歳で子どもを預けるなんて」「3歳までは母親の手元で育てたほうがいい」といった声が気になったりすることもあるかもしれません。東京大学経済学部・政策評価研究教育センター教授の山口慎太郎さんは、データ分析の結果、保育園通いは子どもにとっても親にとってもプラスの効果が確認できたと言います。「保育」に関するデータを読み解いてもらいました。

 山口さんは厚生労働省が実施した「21世紀出生児縦断調査」のデータを用いて、保育園を利用している子どもと、家庭で育つ子どもの言語の発達度合いを比較しました。その結果、保育園を利用している子に、偏差値に換算した場合、6以上高い言語発達が見られました(※1)。

 「親は子どもが口に出さなくても、様子や顔色などで『疲れているのだな』『空腹なのだな』と、彼らの状況をある程度理解します。しかし保育園では、子どもたちは親以外の大人に、要求を言葉で説明しなければなりません。また、保育士さんやほかの子どもが話す多くの言葉を耳にします」。そうした理由から、言語発達に影響があると考えられるといいます。

 ドイツの調査によると、子どもが乳幼児期に母親と過ごした期間の長さは、その後の進学状況や労働所得にほとんど影響を与えていないことも分かっています(※2)。つまり、保育園に預けられた子どもと、家庭で育てられた子どもを比べても、預けられた子どもの成長の結果、長期的にもネガティブな差は見られなかったのです。

 山口さんは「3歳児神話どころか、0歳児にすら家庭養育がベターだと裏付ける有力な実証研究はありません。一定の質が担保された保育を受けていれば、日中の養育者は必ずしも母親である必要はないということが分かります」と言います。

 保育の質に関しては子どもの発達に重要という研究があります。イタリアのボローニャ地方で2000年代に実施した幼児教育プログラムでは、保育の質が家庭の養育水準に比べて劣っていたことで、保育園に預けられた子どもの発達に悪影響が出たそうです(※3)。ボローニャ地方では専業主婦が多く、面倒を見てくれる祖父母と子育て家庭の同居や近居が多いなどの子育て環境がありました。一方で、保育園では保育士1人が預かる子どもの人数が多かったため手厚い養育ができず、マイナスの影響が出たと考えられています。

 「日本でも、待機児童問題の解消を優先するあまり保育園の数だけを増やして保育の質が低下すると、子どもの発達に悪影響が出るおそれはあります」と山口さんは指摘します。

写真はイメージです
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  • 質が担保された保育であれば、安心して仕事ができる
  • 経済学は社会と自分のつながりを実感できるツール

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