彩子は、菜々にホームパーティーに誘われたが、断るタイミングを逃す。だが、心の奥底には行きたい気持ちもあり、おしゃれをして菜々の家に向かった。その理由は――。

【これまでのお話】
プロローグ 新連載・小説「ミドルノート」同期の男女の生き方描く
第1話 新居に同期が集まった夜
第2話 同期会解散後、夫の口から出た思わぬ一言
第3話 妻を無視する夫 「ほんと鈍感だろ、こいつ」
第4話 「妊婦が人を招くなんてドン引き」夫の言葉に妻は
第5話 言っちゃ悪いが無味乾燥で、寒々しい新居だった
第6話 充満するたばこの煙が、昔の記憶を呼び覚ました
第7話 正直言って、事故みたいに始まった恋愛だった
第8話 わたしは誰よりも愛美に認めてもらいたかったんだ
第9話 その後ろ姿を見ていたら、急に切なくなった
第10話 がんは知らないうちに母の体の中で育っていた
第11話 なにが「同期初の女性部長」だよ!
第12話 「女性ということで」とは一体どういう意味か
第13話 わたしはわたしで、仕事をし、家族を守る
第14話 仕事が長続きしないのは、いつも人間関係にあった←今回はココ

■今回の主な登場人物■
岡崎彩子…派遣社員として食品メーカーに勤める
三芳菜々…食品メーカーの正社員。彩子と同学年で、隣の部署で働いている

新たに交友関係を増やしたいという欲も出てきていた

 同い歳の正社員の女性のホームパーティーに招かれたとき、一部の男性社員から「ハケンさん」と呼ばれている岡崎彩子は、即座に「行きます!」と答えた。もちろん完璧な笑顔をこしらえて。そしてその日から、どう断ろうかを1週間にわたり算段し続けた。

 それでも結局行くことにしたのは、誘ってくれた正社員の女性――三芳菜々さん、30歳、社内結婚、妊娠中――が、連日にわたり無邪気な笑顔で、「何か食べたいものとかある?」「手土産とか気にしなくていいからね」「うちから彩子ちゃん家までは、乗り換え時間入れても40分くらいで帰れると思う」などと、こまめに話しかけてきたからである。

 彩子に来てもらいたい気持ちを前面に押し出し、ウキウキと話しかけてくる彼女を前に、断るタイミングを逸した。いや、もしかしたら、心のどこかに、彼女や彼女の同期たちともっと深く関わりたいという思いがあったからかもしれない。この日のために駅ビルのショップできれいな色のカーディガンを購入し、当日は、おっくうだなと思いながらも、念入りに化粧した。

 菜々からは、事前に、新人のころの工場研修で同じ班だった同期たちを招くということも聞いていた。

 同期の再会の場に自分がいてもいいのか何度も確認した彩子に、「ぜんっぜん大丈夫」と彼女は力強く言った。会社を辞めてからだいぶたつ同期もいるし、気の置けないメンバーだからぜひ来てほしい、と。

 菜々の同期には社内有名人の江原愛美や、同じ部署の女性社員がイケメンと推していた坂東や、たまに仕事でやりとりすることもあって穏やかな話しぶりに安心できる西などがいた。そんなメンバーを聞いて、新たに交友関係を増やしたいという欲も出てきていたのである。

 それに……。

次ページから読める内容

  • 菜々の存在もまた、大きいのだった
  • 自分がいけなかったのだろうか
  • 同性の同僚と話すときに身構えてしまう
  • 勤め先を転々とするようになった

続きは、日経xwoman有料会員の方がご覧いただけます

ログインはこちら
もっと見る