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小説/「妊婦が人を招くなんてドン引き」夫の言葉に妻は

【第4話】「いきなり被害者ぶるのやめてくれる?」「成長しきれてない」。理路整然と責め立てる拓也に、菜々は言葉を詰まらせる


妊娠中の菜々と夫の拓也の自宅で、会社の同期メンバーによるパーティーが開かれた夜。同期たちが帰った後、急に不機嫌になった拓也は、菜々が予想もしていなかった言葉を次々とぶつける。理路整然とした言葉で菜々の行いや考え方を注意する拓也。彼はいつも正しい。何も言い返せない。だけど…。

【これまでのお話】
プロローグ 新連載・小説「ミドルノート」同期の男女の生き方描く
第1話 新居に同期が集まった夜
第2話 同期会解散後、夫の口から出た思わぬ一言
第3話 妻を無視する夫 「ほんと鈍感だろ、こいつ」
第4話 「妊婦が人を招くなんてドン引き」夫の言葉に妻は←今回はココ

■今回の主な登場人物■
三芳菜々…食品メーカーに勤める。同期入社の拓也と結婚し、妊娠中。
三芳拓也…菜々の同期で夫。

<同期入社のメンバー>
江原愛美…菜々より一足早く産休・育休を経験したワーキングマザー
坂東、北川…菜々と拓也の同期で、愛美たちと共に三芳家を訪れた

「俺ばっかり働いてたことに気づいてた?」

 そんなつもりはなかったけれど、確かに食卓に香水をまき散らしてしまった。

 注意された瞬間、菜々は自分が非常識なお調子者だったように思えて、惨めな気持ちになったが、真顔で謝ると場が白ける気もして、へらへら笑った。そのせいで、余計に拓也はいら立ったのかもしれない。

 だけど今日は、その時くらいしか失敗はしていないはずだ。

「香水のこと、まだ怒ってるの?」

 菜々が聞くと、「違うよ」と拓也は答えた。

「じゃあ何?」「いいよ、別に」「よくないよ」

 そんなやりとりの後、拓也はため息をついた。そして、ここまで言われたから仕方なく話すというていで口を開き、

「今日さ、なにげに俺ばっかり働いてたことに気づいてた?」

 と言った。

「え……」

 一瞬、何を言われているのか、意味が分からなかった。

「気づいてなかったよね。菜々はずっとそこに座って、皆とワイワイやってたから。その間、俺がひとりで、皆に飲みものを注いだり、料理を取り分けたり、食べ終えた皿を流しに持っていったりとか、全部やってたんだけど、気づいてなかったよね」

 それは、そうだった……かもしれない。

 だけど、

「ご飯はわたしが全部作ったし、運ぶのや洗うのは愛美たちも手伝ってくれたじゃん」

 菜々が言うと、

「だからそれがストレスなんだよ」

 拓也が吐き捨てるように言った。

次ページから読める内容

  • 「坂東や北川たちもドン引きしてたしさあ」
  • 「楽しかったでしょ?」「別に、それほど」
  • 「まじで無神経」などと言っていた拓也が

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朝比奈あすか 小説家
朝比奈あすか

会社員を経て、2000年にノンフィクション『光さす故郷へ』(マガジンハウス)を刊行。06年、群像新人文学賞受賞作の『憂鬱なハスビーン』(講談社)で小説家としてデビュー。以降、働く女性や子ども同士の関係を題材にした小説をはじめ、多数の作品を執筆。代表作に『人生のピース』『憧れの女の子』(共に双葉社)『あの子が欲しい』(講談社)『少女は花の肌をむく』(中央公論新社)『人間タワー』(文芸春秋)『君たちは今が世界』(角川書店)など

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