西と彩子に踏み込んだ質問をし、懲りずにけしかける拓也に、菜々はもやもやし――。

【これまでのお話】
プロローグ 新連載・小説「ミドルノート」同期の男女の生き方描く
第1話 新居に同期が集まった夜
第2話 同期会解散後、夫の口から出た思わぬ一言
第3話 妻を無視する夫 「ほんと鈍感だろ、こいつ」
第4話 「妊婦が人を招くなんてドン引き」夫の言葉に妻は
第5話 言っちゃ悪いが無味乾燥で、寒々しい新居だった
第6話 充満するたばこの煙が、昔の記憶を呼び覚ました
第7話 正直言って、事故みたいに始まった恋愛だった
第8話 わたしは誰よりも愛美に認めてもらいたかったんだ
第9話 その後ろ姿を見ていたら、急に切なくなった
第10話 がんは知らないうちに母の体の中で育っていた
第11話 なにが「同期初の女性部長」だよ!
第12話 「女性ということで」とは一体どういう意味か
第13話 わたしはわたしで、仕事をし、家族を守る
第14話 仕事が長続きしないのは、いつも人間関係にあった
第15話 自分がちっぽけで価値のない存在のような気がした
第16話 不思議と、西には自分のことを話したいと思った
第17話 気づくと、実家に彩子の居場所はなくなっていた
第18話 育休明け直前、世界は混沌とした状態に陥った
第19話 夫は子の意味不明な行動が我慢できないようだった
第20話 かつては泣きわめく子がいると、運が悪いと感じていた
第21話 笑えなかったのは、夫婦関係がうまくいっていないから←今回はココ

■今回の主な登場人物■
三芳菜々…食品メーカーに同期入社した拓也と結婚、1児の母
三芳拓也…菜々の夫、1児の父
三芳樹(いつき)…菜々と拓也の間に生まれた2歳の息子
岡崎彩子…派遣社員として食品メーカーに勤めていたが、菜々の産休中に転職した
西…菜々の同期

は? と、声に出さずに菜々は唇の形を丸くした

「コロナの頃は大変でしたもんね」

 と、拓也が、もうその時期は終わったとばかりに気楽な口ぶりで言った。

「ほんとですよね~」

 さっき一瞬見せた不快な表情を見事に消し去り、彩子は朗らかに応じている。

「今もまだコロナ禍だけどね」と、菜々はどうしてもその突っ込みを入れたくなった。かなり下火になったとはいえ、まだニュースでは感染者数の動向を報じ続けているのだ。

 拓也はそれを受け流し、

「てゆっか、いっそこのまま結婚しちゃえばいいのに。しないの?」

 と、西と彩子に踏み込んだ質問をした。2人が顔を見合わせる。ちょっと照れて、そうねえ、どうだろうねえ、というふうにもごもご言い合う2人はかわいらしかったが、

「まあ、今急いで動いても、結婚式も挙げにくいもんね」

 と、菜々は助け舟を出した。

「もう大丈夫だろ。さすがに。俺行くよ」

 まだけしかける拓也に、菜々はもやもやした。

「菜々は心配性なんだよ。コロナ大変だった頃なんて、ちょっと異常だったもんな。あの頃の俺なんか、菜々から逃げ出るために会社に行ってたと言っても過言じゃないわ」

 拓也の言葉に、は? と、声に出さずに菜々は唇の形を丸くした。

「帰ってくると菜々ちゃん、毎晩『消毒しなさい!』ってすごい形相で迫ってきてさ。やばかったまじで。まあ、俺のことを心配してくれるからだろうけどさ」

 と、最後はのろけて話をまとめた拓也に、彩子と西がほっとしたように小さく笑った。

 しかし菜々は笑わなかった。そのまま何も言わなかった。そのせいで、空気が少しこわばるのを感じたが、それでも菜々は黙っていた。

次ページから読める内容

  • 菜々は、なんだか突きつけられた気がした
  • 拓也は当たり前のように見ているだけ
  • 菜々の気持ちは沈み続けていた

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