中学受験の過熱感が強まり、世の中に情報があふれている一方で、「本来は主流なはずの高校受験が、逆によく分からない」と感じる方も多いのではないでしょうか。そこでDUALでは、ベールに包まれがちな首都圏の高校受験に挑んだ先輩親に、根ほり葉ほり伺っていきます。新連載1回目は、DUAL創刊編集長で日経xwoman編集委員の羽生祥子に聞きました。

【前編】塾なしで公立中→都立国立高 小学生時代の過ごし方は ←今回はココ
【後編】都立国立高に合格 中2からのオンライン留学も転機に

《プロフィール&共通データ》

母:羽生祥子(DUAL創刊編集長)

長女:Tさん(仮名。2022年4月から都立国立高校に進学)

【家族】
父:Sさん(仮名)
弟:Aくん(地元公立中2年)

【通塾】 なし
通信教育 Z会(中1~中3)
オンライン留学 中2の5月~中3の12月(平日毎日2~3時間)

【受験校】
都立 国立高校 ◎
私立 国際基督教大学高等学校(ICU)<併願無し> 〇
都立 第二志望高校 〇

【受験勉強関連の出費】
約103万円(Z会30万円、オンライン留学70万円、外部模試6500円×5回)

【高校受験以前の学習、習い事】
ダンス(小4~小6)、英語(保育園~小4)

「テストで1問もミスしないこと」には無関心

日経xwomanDUAL(以下、──) 高校入試まで、ずっと「塾なし」だったと聞きました。

羽生祥子(以下、羽生) はい、娘も息子もずっと、“塾ゼロ“教育です。住んでいるエリアは中学受験が盛んなのですが、わが家は夫婦ともに公立中高出身で、特に娘は、自分が好きなことにマイペースで没頭する性格なので、塾に通ったり、中学受験をしたりするのは向いていないと観察していました。

── 小学校時代はどのように過ごしていましたか?

羽生 一日中本を読んでいましたね。読書の合間に小説を書いてコンクールに応募したり、ダンスをしたり、お菓子を作ったり。学校の図書館で本に没頭しすぎてドアに鍵がかけられたのも気が付かず、下校時間後に騒ぎになった程です(苦笑)。

学童が終わってからは、ほぼ毎日図書館に通っていました。共働き親子にとって図書館は強い味方です
学童が終わってからは、ほぼ毎日図書館に通っていました。共働き親子にとって図書館は強い味方です

 学校のテストでは、塾に行っている子は100点を連発していたようですが、娘は60点や70点だったこともあります。「テストで1問もミスしないこと」に当時は関心がなかったみたいです。ケアレスミスがあってもへっちゃら、という感じで。でも、いつか学ぶことに興味を持てばきっと大丈夫だと、親としても特に心配はしていませんでした

 ただ、“塾ゼロ”といっても、家で何も学んでいなかったわけではありません。娘は近所の図書館に通い詰めて、ほとんどの本を読破してしまったほど好奇心旺盛です。家に届く朝日小学生新聞や日本経済新聞を毎日、へぇ~ほぉ~と言って読んでいました。

 親としては、テスト勉強以外のことで、学ぶ楽しさを一緒に経験することを大事にしました。例えば戦争や為替、企業動向などに関して新聞に書かれていれば、親子で一歩深めて話をしたり、その会話の中で何か疑問が出てきたりしたら、すぐさまリビングの棚に置いてある国語辞典や漢和辞典、英語の辞書を取りだして一緒に調べるなどして、興味や関心が広がっていくように、「親子で知りたがり教室」のようなことをしていました。自然と「テスト勉強だけが学びではない」という感覚が身に付いたと思います。

食卓のすぐ横に辞書を置いて、すぐに調べられるようにしたのが良かったかもしれません
食卓のすぐ横に辞書を置いて、すぐに調べられるようにしたのが良かったかもしれません

 小学生の勉強としては、塾で点数の上げ方を習うより、家庭内で“リアルタイムの知”を学ぶ方が良いと考え、塾に行かない方針に迷いはありませんでした。ですが、小学3年生の終わりの学童が終わるタイミングで、まわりの友達が一斉に塾に通い始め、わが家に最大の壁が訪れました。

── 何があったのですか。