仕事をしながらの妊娠生活も、出産も、育休の過ごし方も十人十色。「これが正解」というものはありませんが、いざ妊娠・出産となったときに備えて心づもりはしておきたいもの。身近な共働きママたちのリアルな声をお届けする連載5回目は、1児のママである、福祉関係の職場に勤める渡辺千尋さん(仮名、32歳)に話を聞きました。後編では、不妊治療中に職場に対して感じていた罪悪感や、妊娠が判明してから気づいたことなどについてです。

【前編】夫の無精子症が判明 可能性にかけて踏み切った不妊治療
【後編】妊娠後に気づいた「周りは支え方が分からなかっただけ」 ←今回はココ

渡辺千尋さん(仮名)
福祉関係の職場に勤める1児のママ。2019年夏ごろに夫が無精子症と診断され、夫婦で不妊治療を開始。20年12月に息子を出産。約1年半の産休・育休を経て、22年4月下旬に復職。和食店を経営する夫と息子の3人暮らし。

不妊治療はスケジュールが読めないことが一番のストレスだった

 会社の人事部の社員が取り合ってくれたおかげで、無事に2020年1月からわが家の不妊治療をスタートさせることができました。私は、排卵を抑制しつつ、卵巣を刺激させるアンタゴニスト法で卵子を採取しましたが、想定以上に身体的にも、精神的にもハードでした

 卵子を採取するために、採卵日までの間に9~14日ほど注射を打ち、数回の診察を通して経過を見ていきます。注射をする日や薬を飲む日、ホルモンを経皮的に補うテープを貼る日などの日程が記載された予定表に沿って進めなければなりません。注射を打つ日数が多いため、自分で注射することを勧められましたが、私は怖かったので毎回病院で打ってもらうことに。注射を打つために午後6時半の最終受け付けに間に合うように、そして職場の人に迷惑をかけないように、仕事を終わらせなければというプレッシャーがありました。また、ちつ内に挿入する薬もあり、服薬時間が決まっているので、仕事中だったとしてもその時間に合わせてトイレに行って薬を投与しなければならなかったのは大変でした。

このように、ホルモンを経皮的に補うテープをおなかに貼っていました
このように、ホルモンを経皮的に補うテープをおなかに貼っていました

 しかし、何よりもストレスだったのは、不妊治療はスケジュールが読めなかったこと。注射や薬を使って体の環境を整えているとはいえ、必ずしも予定通りには進みません。しかも、採卵日が確定するのは数日前。私の仕事はシフトや人員配置が決まっている上に、人員が少なくキツキツの状態で回しているので、急に休んでしまうと他の人たちに負担がかかってしまいます。幸い、私は予定通りに採卵日を迎えることができましたが、確定するまでは不安でいっぱいで、「予定通りにいきますように」とただただ祈るばかり。

 19年の12月に人事異動の話が出たことを機に職場には不妊治療のことを話していました。なので、注射や診察の日に「病院に行くためにお先に失礼します」と伝えた際には、周りは「大変だね」と声をかけてくれていたものの、私を遠い存在として見ているような気がして。「なんでそんな頻繁に病院に行かないといけないのか」「なんでその日じゃないといけないのか」などと思われているんだろうなと感じながら、不妊治療をするのはつらかったですね。

 無事卵子は30個取ることができたのですが、私の子宮に戻せる受精卵となったのはたったの1個だけ。不妊治療の難しさを突き付けられました