3歳の娘の子育て中に乳がんを宣告されたライターの藍原育子さん。困難を極めた治療と子育ての両立について振り返った前編に続き、後半では、治療中の子育てサポートや、がん患者の妊孕性(にんようせい・妊娠するための力)について、国立がん研究センター東病院でがん患者の生活全般に関する支援を行う、坂本はと恵さんに話を聞きました。

十分とはいえないがん治療中の子育てサポート

藍原 私は入院の際に実家に子どもを預けることができました。しかし実家や配偶者を頼れない患者さんの場合、どのような支援先があるのでしょうか。

坂本 保育園・幼稚園への送迎をお願いしたいときや、帰宅後・休日などにお子さんをみてほしい場合、自治体のファミリー・サポート・センターが選択肢となります。また園に通っていないお子さんの場合は、定員に空きのある保育園で実施される「緊急保育」や、乳児院での預かりなどもあります。

画像はイメージ
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坂本 ただ、これらを含めても、支援体制は正直なところ十分ではないのが現状です。私たち相談員も患者さんのお声を聞くたびに何かもっと打つ手はないものか……と頭を抱えます。自治体によっても受けられるサービスがそれぞれ異なりますので、まずは住んでいる自治体の「子育て相談窓口」や病院の「がん相談支援センター」に相談してください。

●ファミリー・サポート・センター
育児の援助を受けたい人と補助を行う人がそれぞれ会員となり、保育施設への送り迎えや、学校の放課後に子どもを預かる、保護者の急用や病気・通院などの際に子どもを預かる、などの援助が受けられる。一部の市区町村では病児・病後児の預かりや早朝・夜間など緊急時の預かりにも対応。具体的な内容や料金は市区町村によって異なる。

●緊急保育
保護者の病気などにより昼間保育する人がおらず、他に手段がない場合に、緊急に保育施設で預かる制度。定員に空きのある保育園などが受け入れ先となり、保育園に入所可能な年齢から小学校就学前までの子どもが対象。預け入れの条件や定員、期間などは市区町村によって異なる。

藍原 入院中だけでなく、退院してからもしばらくは元のように子どもを世話することはできません。退院後も頻繁に通院する必要がありますし、ようやく治療を終えて家に帰ると子どもがぐずったり、または元気いっぱいで「ママ遊ぼう! 遊ぼう!」とぴょんぴょんはねていたり……。

坂本  患者さんが治療に専念できるような子育てサービスがもっと充実してほしいですね。こうした患者さんの子どものサポートについては、少しずつですが医療者の意識や関心も高まっています。