仕事、家事、育児…治療に使う時間はどこ?

 当時は育児と仕事の両立に苦しみ、試行錯誤の毎日でした。夫は出版社勤務で早めの帰宅は望めず、平日はファミリーサポートやベビーシッター、どうにもならないときには実家の母に泊まりにきてもらって、なんとかやっていました。そこに新たに加わった「がん治療」。

 「治療に使う時間などどこにもない」というのがそのときの正直な気持ちでした。いっそ聞かなかったことにして、治療を先延ばしにしてしまおうかと思ったこともあります。もしかしたら何かの間違いかもしれない。だってずっと良性だと言われていたし、他の病院に行けば違う診断が下るかも……。しかし転院先でも、がんという診断は覆りませんでした。

退院がゴールではない。ママががんを患う現実

 実際にがんに罹患した者として、メディアで描かれるがんは、まだまだステレオタイプだと感じます。登場人物の一人にがんが告げられ、闘病生活が始まる。結果そこから回復する、または悲しい結末を迎える……。

 しかし現実は、がんの闘病とともに生活も続いていくことが多く、がん治療だけに専念できる人はなかなかいません。特にママががんになった場合、仕事に家事に育児にと、すでにずっしりと背負っているところに、「治療」という新たな柱が加わります。そしてそのどれも簡単に手放すわけにはいきません。

 いわゆるがん家系でなくても、食生活に気を付けていても、たばこを吸わなくても、がんになる可能性はゼロではありません。まさか自分はならないだろう……と思っていても、がんの告知は突然やってくることがあります。がんは「特別な病気」ではなく、誰もがなりうる病。ママががんになるのは、映画やドラマの中だけの話ではないのです。

 もしがんを告知されたら今の生活はどうなるのか、またがんでなくとも何かしらの病気を患って入院・闘病生活が始まったら、働くママは何をどのようにしていけばいいのか。私の経験を基に、ぜひ自分事として考えてもらえたらと思います。次回はがんを罹患してからの「働き方」についてお伝えします。