早期教育よりも自由な遊びが重視され、「自分で考えて、何かを変えようと行動する」ことを目指すフィンランドの保育・教育の在り方は、「起業家精神を養う保育」ともいわれ、日本でも教育関係者や政治家の間で注目を集めています。変わり続けるフィンランドの義務教育事情について、東京・港区にあるフィンランド大使館で働く堀内都喜子さんがリポートします。

校内のあらゆる場所にWi-Fiが飛び、コンセントも用意

 フィンランドの小学校では、ここ15年ほどでデジタル環境の整備が進みました。校内のあらゆる場所にWi-Fiが飛び、コンセントも用意されています。自主的な学びに力を入れているため、個人や小グループでの探求型授業をよく行いますが、調べものや発表時にPCやタブレットが活用されます。発表時も、プレゼン資料だけでなく動画を作成するなど、現代ならではの創造力を刺激する使い方もされています。作文などの提出物は、年齢が上がるにつれて紙ではなくメールで送信することが増え、テストでもPCが使用されます。高校課程修了時に受ける全国的な試験は、数年前からPCを使って回答する方式に変更されています。

校舎や教室のレイアウトが変化し、ユニークな家具をあちこちに配置している学校も増えたため、デジタル機器を使ったグループワークも好きな場所で自由な姿勢で取り組むことが可能に(C)Finland Promotion Board
校舎や教室のレイアウトが変化し、ユニークな家具をあちこちに配置している学校も増えたため、デジタル機器を使ったグループワークも好きな場所で自由な姿勢で取り組むことが可能に(C)Finland Promotion Board
校舎や教室のレイアウトが変化し、ユニークな家具をあちこちに配置している学校も増えたため、デジタル機器を使ったグループワークも好きな場所で自由な姿勢で取り組むことが可能に(C)Finland Promotion Board

 さらに教育とテクノロジーを合わせたエドテックが盛んなフィンランドでは、教育ソフトやゲームの開発に民間、大学が協力して取り組んでいます。教科書はまだ紙が中心ですが副教材、補助教材としてアプリやゲームを積極的に活用しています。例えば数学の練習問題にゲーム要素のあるアプリを導入したところ、子どもたちの意欲が増し、学習効果が4割上がったそうです。体育と社会を合わせ、ポケモン GOのようなアプリで街歩きを楽しんだ話もあります。

 できる子どもにはより難しく、そうでない子にはよりシンプルな問題をと、各個人のニーズに合わせた問題を提案しやすいのもデジタルの良さです。さらに、進捗状況、正答率、つまずきやすい問題が一目で表やグラフで表示されることで、教師が子どもたちをより正確に理解する上でも役立っているそうです。

 このように学習効果向上の声が聞かれる一方で、デジタルが原因で最近は読解力が落ちているのではないかという懸念も聞かれます。