世界経済フォーラム(WEF)が発表した「ジェンダーギャップ指数2021」で2位となったフィンランド。女性が活躍できる背景の一つに、男性たちが積極的に家事育児に関わっていることが挙げられます。かつてはフィンランドでも、「家事育児は女性の仕事」と考えられていたそうですが、どのような改革が行われたのでしょうか。東京・港区にあるフィンランド大使館の広報として働く堀内都喜子さんがリポートします。

就学児童が共に過ごす時間は父親のほうが母親よりも長い

 先日、世界経済フォーラム(WEF)が2021年の「ジェンダーギャップ指数」を発表し、フィンランドはアイスランドに次いで2番目にジェンダー格差の小さい国となりました。

 配偶者控除がなく、男女共働きが当たり前のフィンランドでは、社会でも家でもジェンダー平等を推し進めてきました。その結果として最近では、父親休業(父親だけが取得できる育児休業)の取得率は8割、就学児童が共に過ごす時間は父親のほうが母親よりも長くなっています。そんなフィンランドも、かつては家事と子育ては女性の仕事と考えられていました。今回は、父親の育休取得の事情をお伝えしたいと思います。

 2021年時点の制度では、フィンランドの父親休業は最長54勤務日(約2カ月半)。うち18勤務日(3週間強)は母親と同時期に取得可能ですが、残りは子どもが2歳になるまでに母親が働いている条件下で取得可能です(※)。休業中、収入に応じて手当が支給され、例えば年収約500万円の場合は、1勤務日当たり約1万2000円となります。

 現在、出産直後の約3週間に育休を取る父親は8割。母親が仕事復帰したタイミングでさらに残りを取る父親は約5割で、その間は保育園に預けず父親が単独で最長約2カ月、子どもを見ます。

妻が仕事復帰したタイミングで二度目の育休を取るパパも少なくない。(C)Finland Promotion Board
妻が仕事復帰したタイミングで二度目の育休を取るパパも少なくない。(C)Finland Promotion Board

 フィンランドでは里帰り出産をする人は聞いたことがありません。進学先や就職先がどんなに家から近くとも、成人したら独立して生活し、3世代同居もほとんどありません。しかも出産時の入院はわずか1~2日。大きな問題がない限りはすぐに自宅での生活が始まります。

 出産で疲れている上に、子どもの世話が始まるわけですから、父親のサポートなしでは厳しいものです。子どもの祖父母が近くにいれば手伝いに来ることはあるかもしれませんが、赤ちゃんと父母が家族としての基盤をいかに早くつくっていくかということを大切にしています

※父親休業のほか、母親・父親のいずれかが取得できる有給(158勤務日分)の「両親休業」や、子どもが1~3歳の間に取得できる無給の育児休業(国と自治体から在宅保育手当が出る)などもある