国連の機関が発表した「世界幸福度ランキング」で、2018年~2021年の4年連続で1位を獲得したフィンランド。教育や福祉が充実、育児休業を取得する男性が8割以上いるなど、共働き子育ての先進国でもあります。仕事も休みも大切にするフィンランド流の働き方・生き方には、私たちが幸せになるヒントが隠されているかもしれません。東京・港区にあるフィンランド大使館の広報として働く堀内都喜子さんがレポートします。

第一回は、フィンランドの在宅勤務事情について。日本と同じ悩みを抱えつつ、一歩進んだ工夫もあるようです。

多くの人が16時で仕事を終える国

 フィンランドは最近、ムーミン以外にも子育て支援や、サウナなどで知られるようになってきました。私はフィンランドの大学院を卒業後、企業や大使館で働いてきました。私自身に子どもはいませんが、多くのフィンランド人と交流してきて感じるのは、フィンランドの働くママもパパも忙しく、さまざまな悩みを抱えていること。幸福度ランキング4年連続1位の称号を得ても、決してパラダイスではありません。

 一方で長年、社会でも家庭でも、年齢、宗教、性別などあらゆる要素にとらわれない平等を推し進めてきたフィンランドには、これまで培ってきた経験やノウハウの蓄積があり、未来を見据えた挑戦も積極的に行われています。この連載では、働き方、教育、ジェンダー平等などについて、日本の未来へのヒントとなり得る話題を紹介していきますね。

首都ヘルシンキのシンボル、ヘルシンキ大聖堂 画像提供: City of Helsinki
首都ヘルシンキのシンボル、ヘルシンキ大聖堂 画像提供: City of Helsinki

 フィンランドの魅力の一つとして、「ワークライフバランス」があります。人口550万人で天然資源が乏しいこの国では、人が一番の資源であり、イノベーションに未来を見出しています。競争力を高めるため、長時間労働よりも、場所や時間にこだわらない柔軟な働き方で人材を十分に生かすことが、法律レベルで推奨されてきました

 よほどの理由がない限り残業は認められず、多くの人が8時ころから働き始め、16時を過ぎると官公庁でも大企業でもほとんどの人が帰ってしまいます。フレックス制度を採用する職場も9割にのぼり、子育て家庭にとっては子どものお迎えに行きやすい環境が整っています

 そんなフィンランドで、在宅勤務が働き方の主流になって1年が過ぎました。もともと新型コロナウイルスの感染拡大前から、週に一度以上の在宅勤務をしていた人たちは全体の3割、管理職にいたっては6割を占めていました。管理や監視よりも信頼をベースに任せるマネジメントスタイルが主流なことや、レポートをまとめるなどの作業には在宅のほうが集中できることなどが、管理職の高い在宅勤務率の背景にあります。