今回は、日本から見ると地球のちょうど反対側にある南米アルゼンチンの状況について、現地在住ライターの山本夏子さんがリポートします。他国に住む伯母にオンラインで子どもの宿題を見てもらうなど、創意工夫をこらして難局を乗り切ろうとしている、3人子育て中の共働き一家のノウハウを紹介します(4月19日時点の情報に基づいています)。

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ドイツ編
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素早い社会的隔離政策

 日本から見ると地球のちょうど反対側にある南米アルゼンチンは今、爽やかな初秋の季節です。私の住むロサリオは、雄大なパラナ川沿いに広がるアルゼンチン第3の都市で、市内にはいくつもの緑豊かな公園や遊歩道があり、秋晴れの日には外へ飛び出したくなりますが、残念ながら今はそれができません。アルゼンチンも新型コロナウイルス感染予防のため、全国民が自宅待機となりました。

ロサリオは、サッカー選手メッシの出身地で、アルゼンチン国旗が生まれた場所としても有名。パラナ川沿いに建つ国旗記念碑が街のシンボル
ロサリオは、サッカー選手メッシの出身地で、アルゼンチン国旗が生まれた場所としても有名。パラナ川沿いに建つ国旗記念碑が街のシンボル

 アルゼンチンで最初の感染者が確認されたのは、3月3日のこと。3月16日に全国の小中学校が一斉休校となり、3月20日に全国民外出禁止令が敷かれました。決定から実施までがあっという間で驚かされましたが、素早い社会的隔離政策で感染規模は比較的抑えられているようです。4月19日時点での感染者数は2839人、死亡者数は132人(アルゼンチン保健省公式HPによる)となっています。

 アルゼンチン政府が迅速な対応に出たのには理由があります。他の中南米諸国とは違い、この国の人々は大半が欧州系移民であることから、ヨーロッパのパスポートを所持している人が多く、昨年12月から今年3月の夏休み期間中にイタリア、スペインをバケーションで訪れた大勢のアルゼンチン人の帰国ラッシュが始まっていたのです。実際に最初の感染者もヨーロッパからの帰国者でした。

 ラテンアメリカの国々は、感染拡大の時期がアジア、ヨーロッパよりも遅かったため、他国から多くを学び、速やかに対応することができました。ラテンアメリカは多くが開発途上国もしくは新興工業国であり、場所によっては衛生概念もいまだ低く、貧困などの社会問題が根強く残る地域です。もしも新型コロナウイルスが最初にこの一帯を襲っていたなら、その被害は途方もない数字になっていたかもしれません。

個人の散歩やジョギングなども禁止

 アルゼンチンの今の生活は、(1)スーパー、食料品店、薬局以外の商店は閉店、(2)生活必需品の買い物、病院通い、犬の散歩以外の外出は原則禁止、(3)子どもは自宅学習、(4)仕事は自宅にてテレワーク、などです。

 個人の散歩やジョギングなども禁止されている点が、他国よりも厳しいかもしれませんが、少しでも規制を緩めてしまうと、すぐにわいわいと集まってしまうアルゼンチン人気質を先読みしてのことでしょう。実際に、いつもの習慣からマテ茶を回し飲みして感染が広がったという記事も出ていました。