テレワークのできない業種の補償については各ケースによります。少しずつ政府からの補償政策が公表されていますが、まだカバーされない人々のほうが圧倒的に多く、経済的な不安が社会全体を覆っています。特に日雇い仕事に従事していることの多い最貧困層の家庭にとって、外に出られず日銭が稼げないことは死活問題で、政府もまずはそうした人々の救済策から着手しました。
それでも、補償を巡っての大議論は起きず、人々がパニックに陥ったり、買い占めに走ったりすることもなく、淡々と自宅待機生活を送っているアルゼンチン人を見ていると、歴史的に有事に慣れている人々のタフさを感じます。
同時に、政治不信が根強く、政府に助けてもらえるという信頼感がまるでないので、国の補償を期待していないという現実もあるかもしれません。政策への不満を口にするより、この難局をどうやって自力で生き抜くか、ということに集中している人が圧倒的に多いような印象を受けます。
4月13日からは農業や建設業など、業種によって段階的に生産活動が開始されました。また商業分野でも、レストランやジェラート店など、宅配やテークアウトで対応できる店はドアを閉めたまま“開店”し始めました。ただし小中学校などの休校は、7月中旬の冬休みが終わるまでは続きそうです。
オンライン授業開始 スピーディーな自宅学習制度の導入に驚く
わが家にも10歳の娘がいます。小中学校が一斉休校となってから最初の2週間は、小学校の各教員からバラバラとメールやWhatsApp(メッセージアプリ)を通じて宿題が届き、終わった宿題を返送するという形で学習を続けていました。ですが、3週目に入ると、多くの公立小学校が共通の自宅学習用テキストを2週間分配布し、同時に毎日1時間から1時間半のオンライン授業も開始しました。
短期間のうちに完成度の高いテキストが編集、配布されたことにはかなり感心しましたが、初めての試みであるZoomを使ったオンライン授業は、誰もが好き勝手におしゃべりしてまとまらず、先生も子どもたちもげらげら笑いっぱなし。何とか形になるまで数日を要しました。それでも、「失敗してもいいからとりあえずやってみる」精神が、非常時には道を切り開く重要な鍵になるのだと、日に日に授業らしくなっていく過程を見て実感しました。