「誰が子どもの面倒を見る?」を解決した国の施策

 休校、休園になっているものの、学校や幼稚園、学童保育は、仕事に行かなければならない親のために、子どもを預かることは可能です。しかしその条件は日々厳しくなり、医療関係、交通機関、警察や軍隊、スーパーや薬局とその流通、清掃、子どもを預かる施設、ジャーナリストなど、特定の職業グループに属する人と、シングル親のみの利用に限られるようになりました。

 一方、政府は、上記の職以外のリモートワークを推進するだけでなく、14歳以下の子どもを持つ親に対する、特別有給休暇の支給を決定しました。さらに、「クルツアルバイト」と呼ばれる短時間労働制が導入され、被雇用者が労働時間を最大10%まで減らしても、給料の80%が補償されることになりました(高所得者を除く)。

 政府が万全の体制を整えたことで、親は失業や収入減を心配せず自宅にとどまることができ、祖父母や学校、幼稚園に預けなくとも、子どもの面倒を見ることができるようになりました

 一方、こうした制度の対象にならずに、通常通りの仕事量をリモートワークでこなしながら、子どもの家庭学習を見なければならない家庭も多数あります。実際のオーストリアに住む共働き家庭は、家庭学習と在宅仕事をどう両立しているのでしょう。

家庭学習と在宅ワークは両立可能か?

 遊びたい盛りの元気な小学3年生(8歳)の長男、「ママ見て、ママ聞いて」が止まらない幼稚園年中(5歳)の次男と、好奇心で何にでも手を出す1歳の娘のいる、ウィーン在住共働きバイリンガル家庭のわが家を例にとってみます。

 夫は裁量性で成果主義的な仕事をしている上、会議などが延期されて仕事量が減ったため、週2、3回半日ほど出勤して書類を持ち帰る以外は、在宅ワークになりました。しかしクルツアルバイトや特別有休の制度を活用していないため、自宅で十分な仕事時間を確保する必要があります。

 私はもともとフリーランスの在宅仕事ということもあり、出勤の必要はないですが、その分、3人の育児と大幅に増えた家事の負担がのしかかります。日中机に向かう時間はほとんど取れず、夜は力尽きてしまう日もあり、仕事時間と体力の確保が最大の課題となっています。

 子どもたちが「コロナフェーリエン!(ドイツ語で「コロナ休暇」)」と浮かれる中、親は時間と体力のやりくりに、夜な夜な話し合いと試行錯誤を重ねました。

 周りの親たちを見ていると、長男の通う公立の小学校では、クラスの児童23人すべての親が、在宅ワークや政府の制度を利用して家にいることができたため、学校の預かりを利用している子どもはいません。次男の幼稚園の場合、同じ組の22人のうち、親の職業の都合で幼稚園を利用しているのは、たった一人となっています。ウィーン全体でもこの傾向は変わらず、ほとんどの子どもたちが、祖父母宅や幼稚園、学校、学童保育に行くことなく、親の元で自宅学習を行っています