親たちの意識を変えた看護師の訴え
保育園から大学までのすべての学びの場のクローズが3月16日からと決まった時、会社はまだほぼ通常通りでした。そのため親たちは「子どもたちをどうする!?」「ではどこどこに集めましょう」と相談し、それを実行していました。
しかし既に毎日のように死を目の前に突きつけられている看護師の一人が、テレビ番組で電話を通し、涙ながらに訴えたのです。「親御さん、何をしているのですか! これは公務員のストライキとは異なるのです(注・先生たちが行う教育機関のストライキが年に何度かあり共働きが普通のフランスは隣人同士などで助け合うのが恒例)、人が集まっては危険という基本的なことを分かっていますか? それが命にかかわるということを!」
そしてこう続けました。「私たちは際限なく仕事をしています。しかし患者は次々に運ばれて来ます。同僚が最近亡くなりました。けれど彼女のために、たった1分の黙祷を捧げることもできないのです」。それは大統領の非常事態宣言以上に国民に訴えるものがあったのではないでしょうか。
事態はすぐに急転。感染者や死者の数が数日で増えたことで、学校閉鎖の翌日から、国は必需品を扱う店以外のすべての店のクローズと、テレワークへの移行を命じました。そのすぐ翌日の朝、人々は職場へ大きなカバンを持っていき仕事に必要なものや私物を詰めて、回れ右で帰宅しました。またね、のいつものハグも握手も、ビズ(あいさつのキス)もできずに。そして子どもたちと親が朝から晩までを、共に過ごす日々が始まりました。
レストラン、ブティック、デパート、ホテル、劇場、アミューズメント関係施設などは完全に閉鎖なので、それに関わる人々は皆、自宅待機です。行政サービスは完全にストップしていませんが、例えば市役所や区役所は、空いている時間が短く変更されたり、クローズされて他の役所に併合されたりしています。さまざまな書類⼿続きは、出⽣・死亡届を除き、緊急な場合を除いて⾏われていません。
パリには保育園が多く、またロワジールセンターという、学校が終わった後や長期休暇の時期に、働く親の代わりに子どもを見てくれる学童保育のような施設があります。多くの親たちがお世話になりますが、ここで働く人々も今は全員自宅待機です。また地方の空港などで仕事をする公務員たちも、半自宅待機です。
職種によっては、自宅待機を超え、失業、半失業になっている人も、どんどん増えています。4月3日時点では、84パーセントのサラリーが保証されるとされていますが……。