子どもだけでなく、自分も見つめ直した

 9月ごろから強まった長男の不登校に山本さん夫妻は試行錯誤する日々。スクールカウンセラーを頼ったり、発達障害専門のクリニックに通ったりと、あらゆる手段を試しました。

 同時に、山本さん自身もカウンセリングサービスを利用したり、教育事業に従事している友人に話を聞いてもらい、コーチングをしてもらったりしたそうです。

 「もともと夫婦の教育方針で“子どもを一人の人間として尊重する”ということを心がけていたはずなのですが、自分のコミュニケーションの癖を徹底的に見直していくと、なんとか学校に行かせようとする自分の行動は、子どもを都合のいいようにコントロールしようとしていることに他ならないことに気づかされました。やっぱり自分の中に“親たるものはこうあるべきだ”“子どもたるものはこうあるべきだ”という固定観念があったみたいです。これは自分でもショックでしたが、認識できたことで、それを手放していくことにつながったと思います」

 学校に行くことを無理強いしなくなるなど、山本さん自身が変わっていくと、家族との関係性も変わっていきました。それまでは長男が気持ちを打ち明けるのは妻が中心だったのですが、父親である山本さんにも打ち明けてくれるようになってきたそうです。また、夫婦間のコミュニケーションもそれまで以上にスムーズになったのだとか。

 「子どもの不登校に対して、夫婦で意見の折り合いをつけられないと、お互い苦しいし、何より子どもがつらい。『今は子ども自身と向き合うことが大切なのでは』と考える親と、『子ども自身の気持ちなんてどうでもいいから、とにかく行かせればいいんだ!』という親で対立してしまったら、どちらもつらいだろうなと思います。不登校になったときに、”とにかく学校に行かせなくては”という考えを手放せたこと、私自身カウンセリングなどを通じて妻とのギャップの本質に気づくことで、今は夫婦で足並みをそろえて長男に向き合えていると思います」

 不登校になると、親は子ども自身に原因を見つけようとしがちですが、その目を自らに向けたことで、より広い視点で問題をとらえ、向き合っていくことにつながったようです。

写真はイメージ
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