「学校がつまらない……」

 しかし、いくら二人が力を合わせても、なかなか解決できない事態が起こります。

 「長男は、保育園のときからたまに登園を渋るときがありましたが、私たちは『まあ大丈夫だろう』と考えていたんです。でも、小学校に入ってからだんだんその傾向が強くなっていきました。幸い、次男の出産と長男の“小1の壁”に備える意味もあってリモート可能な仕事に転職していたため、登校の付き添いもできたのですが、それでも変わることはありませんでした」

 山本さん夫妻がつけていた長男の成長記録には、その経緯が事細かく記されています。

(※一部加工・抜粋)
【2020年度 長男 小学1年(6歳)】
■3月 次男誕生
■4月・5月 新型コロナウイルスによる緊急事態宣言で休校
 自宅でプリント学習、進研ゼミのタブレット学習に取り組む
■6月 分散登校
 2日目で「行きたいわけじゃないんだよなぁ」ともらす
 「学校つまんない」「知ってることばっかり」「しゃべっちゃダメ」「休み時間も座ってなきゃいけないんだよ。なんで疲れてるのに宿題しなきゃいけないの? 大変」など
■8月 夏休み
 iPadでお絵描きを始め、Web上にお店を開く。売り上げ、利益、経費について学ぶ
 ブロックの作品をInstagramで発表する
■9月 登校渋りが強まる
 玄関から出られず、「行きたくない」と号泣。初めて休む
■10月・11月 週1くらいのペースで休むようになる
 長男から「お友だちと遊びたいけど、学校に行っても友だちと遊べない」「休み時間も自由に過ごせない」との訴え(休み時間に教室で絵を描いていたくても外に出なきゃダメ、など)
 初めてお友だちと放課後に遊ぶ
 ストレスからか服かみの行動が増える
 「疲れた」という発言が増え、プログラミング教室以外は習い事も休むように
 →本人が「休みたい」と言ったときは休ませる方針にする
 週5で行くことを諦め、事前に週に1回、休む日を設定
■12月 連続で学校に行けなくなる
■1月 始業式には行ったものの、休みが増える
 行く日を決めて、音楽の日だけ行く、音楽の時間だけ行く、など行けるときだけ行く形に
 学校のスクールカウンセラーの予約をして相談開始
■2月 ほぼ休む
■3月 週1、1時間、本人が行ってもいいという音楽の時間だけ付き添って登校
 自宅学習で時間を決めて、学校の宿題プリントの取り組みと、外部教育サービスのタブレット学習を行う
 スクールカウンセラーからの紹介で、区の適応指導教室の見学、相談

 「長男も『行きたくない』とはいうものの、一緒に登校して学校までたどり着けばどうにかなることもあったので、当初はなんとか学校に行かせようとしていました。でも、長男が『つまんない』と言い始めたあたりで、妻が学校に見学に行ってガマンしている姿を見たこともあり、つまらないところに行ってガマンさせてしまう、学校に行かせることで自分の気持ちを押し殺してしまうのはちょっと違うかなという考えになっていきました」

 山本さん自身、兄が中学生のときに不登校だったそうで、学校に行かないということを理解できないわけではなかったそうです。しかしわが子、それも小学生となると「なかなか受け入れられなかった」と当時を振り返ります。一方、山本さんの妻は仕事で発達障害児などと接する機会もあり、長男に柔軟な対応をしようとしていたため、二人の方向性にはややギャップがあったそうです。

学校に行かなくても、自宅学習でキャッチアップできる(写真はイメージ)
学校に行かなくても、自宅学習でキャッチアップできる(写真はイメージ)