東京大学を卒業し、プロポーカープレーヤーとして活躍する木原直哉さん。2012年に第42回世界ポーカー選手権で日本人として初めて優勝しました。現在4歳と2歳の息子たちを育てるパパでもあります。自分の道を切り開いてきた木原さんのこれまでの人生、そしてパパとして思うことについて、3回の連載で紹介します。

<プロポーカーパパ 木原直哉 人生という「不確定不完全情報ゲーム」の歩み方>ラインアップ
【1回目】プロポーカーパパ 東大進学後にまさかの方向転換 ←今回はココ
【2回目】「好きがたくさんあると得だよ」と子に伝えたい
【3回目】プロポーカーパパが考える 運に翻弄されない人生とは?(予定)

ポーカーは「人生の縮図」だから面白い

 はじめまして、木原直哉です。皆さんはポーカーというゲームをご存じでしょうか? リアルにポーカーを打つ場がない日本では、ゲームの名前は知っていても、詳細までは知らないという人が多いかもしれません。

 世の中のゲームはいくつかの種類に分類されますが、その中でポーカーは「不確定不完全情報ゲーム」に分類されます。これについて少し説明をすると、まず、サイコロを振る、カードが配られるなど運に左右される要素がないゲームを「確定ゲーム」、さらに相手の手がすべて見えるゲームを「完全情報ゲーム」とよびます。皆さんが知っている囲碁や将棋などは「確定完全情報ゲーム」です。これらのゲームは完璧に読んで、ミスをしなければ理屈の上では負けない、ということになります。

 これに対してポーカーは強いカードが良い組み合わせで配られれば有利になるなど、運に左右される要素があり、さらに相手の手も見えないため「不確定不完全情報ゲーム」に分類されます。ポーカーのほかはマージャンもこのグループで、これらのゲームはある程度運に委ねることも必要になります。

 さらにポーカーの場合はこれに加え、心理戦要素が加わる点も特徴です。ポーカーは手札でより強い手(役)を作っていくのですが、ゲームの目的は単に強い手を作ることではなく、ゲームの中で出し合った賭け金を最終的により多く獲得することです。弱い手であっても強く見せかけて、多くの賭け金をもらうことは可能です。つまり、自分の手が弱くても、多くのチップを賭けて強いと見せかけるブラフ(ハッタリ)によって、他のプレーヤーが「この人の手は自分の手よりも強い可能性が高い」と判断してゲームを降りた場合、手札が弱くても賞金を獲得することが可能なのです。

 強さ、運、そして心理戦とが掛け合わさるポーカーでは時には理不尽な負け方をすることもありますが、私にはこの点がまさに人生の縮図のように思えるのです。人生では、突然病気になってしまうなど、どうにもならないことがたくさん起こります。私たちは日々努力を重ねて生きているとはいえ、ある程度運にも身を委ねていますよね。だからこそ泣いたり笑ったり、人生は味わい深いのだと感じます。

 今回の連載では、そんな人生の縮図たるポーカーに日々向き合う私なりに、これまでの人生を振り返りつつ、自分なりの生き方論について考えてみたいと思います。初回の今回はまず私が、なぜポーカープレーヤーとなったかについてお話しします。