多様な人材が活躍できる職場を実現するための「ダイバーシティマネジメント」を考える連載。職場のダイバーシティを経営に生かし、新しい市場の開拓や自社の差別化に取り組む企業はどのような工夫をしているのでしょうか。マイノリティーが入りやすい保険商品の開発に挑む、R&C代表取締役社長の足立哲真さんの話を聞いた上編に続き、今回は、商品開発や営業を担当するチームのメンバーに聞きました。

【上編】 少数派の声をもとに 保険代理店が新事業を開拓
【下編】 小さな気付きとチーム力で既存商品の壁をクリア ←今回はココ

会話がきっかけで生まれた

 上編で触れたように、LGBTフレンドリーな生命・医療保障「パートナー共済」誕生のきっかけは、足立さんと小吹文紀さん(R&Cパートナー共済推進室長)の会話でした。小吹さん自身がゲイで、LGBTの人たちが生命保険に加入するには、高い壁があることを痛感していました。

 「ほとんどの生命保険は、同性パートナーを死亡時の受取人に指定できますが、確認面接や、誓約書、自治体の発行する同性パートナーシップの証明書などの書類が必要です。一方、相手が異性の場合は、戸籍上の夫婦ではない内縁関係であっても、証明書は不要です。

 そもそも『男性2人の家族です』『受取人は同性です』と営業担当者に言ったらどんな顔をされるか、などと考えて、保険に入ること自体を最初から諦めてしまう人たちは多いのです」

 小吹さんがこうした事情を赤裸々に語ると、「既存のもので解決できないなら、作ればいい」と足立さん。保険代理店で商品を開発するという提案は、「小売店」という立場から「メーカー」になるようなもの。極めて異例の決断だったと言います。