経営トップや上の世代任せにせず、自分たち自身の手で、多様な人材が活躍できる職場を実現するには? 組織の「ダイバーシティマネジメント」を考える連載。コロナ禍で企業のダイバーシティに対する取り組みに変化はあるのでしょうか。LGBT(性的少数者)などに向けたダイバーシティ求人サイトJobRainbowを運営し、ダイバーシティに関する研修やコンサルティングも行う星賢人さんに2回にわたって聞きます。

【上編】 コロナ禍 組織のダイバーシティが苦境脱出のカギに ←今回はココ
【下編】 LGBT社員が働きやすい職場へ 求められることは

 星賢人さん(JobRainbow代表取締役CEO)は、中高一貫の男子校に進学後、次第に自分がゲイだと自覚し始めました。物腰の柔らかさから同級生にいじられるようになり、学校に行かなくなった時期もあります。

 大学ではLGBTサークルの代表として活動。サークルのメンバーが、就職活動で苦労を重ねるのを目の当たりにして就活・転職サポートの必要性を感じ、2016年にJobRainbowを創業しました。現在は、LGBTなど多様な人材活躍に向けて、ダイバーシティに取り組む企業を紹介する求人サイト運営のほか、ダイバーシティに関する企業の研修やコンサルティングも行っています。

 新型コロナウイルスの感染拡大で、1~3月期の国内総生産(GDP)がマイナス成長となるなど日本経済は深刻な打撃を受け、景気の先行きに対する不透明感も広がっています。半面、企業の出社自粛でリモートワークが普及し、多様な人材が活躍しやすい環境整備が進みました。コロナ禍で、企業のダイバーシティに対する取り組みに変化はあるのか、などについて星さんに聞きました。

業績悪化で生き残り優先、後回しにされるダイバーシティ

―― コロナ禍により、多くの企業が打撃を受けました。ダイバーシティの取り組みは変化するでしょうか。

星さん(以下、敬称略):ダイバーシティ施策はまだ多くの企業に、本業とは直接関係のない「コスト」として捉えられており、有事の際はないがしろにされがちです。残念ながら、コロナ禍で経営に打撃を受けた企業が、生き残りを優先してダイバーシティへの取り組みを後回しにしてしまう恐れはあるでしょう。

―― ダイバーシティは単なる「コスト」なのでしょうか?

JobRainbow代表取締役CEOの星賢人さん
JobRainbow代表取締役CEOの星賢人さん

星:そうは思いません。例えば2008年のリーマン・ショックに伴う金融危機の際、組織の多様化を進めていた会社ほど柔軟に事業転換や新規事業への参入を進め、苦境から早く脱出できたという研究結果もあります。

 また少子高齢化に伴い、たとえ景気が低迷しても人手不足は続く見通しです。企業に「就社」し、手厚い保護と引き換えに会社主導のキャリアを受け入れる「メンバーシップ型」雇用から、働き手が自分のスキルに合った仕事を選択する「ジョブ型」雇用への転換も進んでいます。自己決定権が働き手に移る中で、マイノリティーも含めた社員一人ひとりが自分らしく働ける職場づくりは、経営戦略上も不可欠なのです。