口を出してしまうから子どもにスケートはさせたくない

 長男は今年5歳になります。長女は3歳になりました。2人の子どもを育てて思うのは「育児は予定通りにいかないことの連続」ということ。何かを予定していても、子どもがぐずったりして、たいてい予定通りにはいきません。これまで、常に先を見越して計画的に動いてきた私にとって、初めての経験です。

 長男は習い事をしているので、私の母がしてくれたように送迎し付き添っています。よく「子どもにもスケートをさせたいですか?」と聞かれますが、正直、させたくないです(笑)。私がスケートについてよく分かっている分、子どものスケートに絶対に口出しをしてしまうと思うから。今でも長男の習い事に付き添っていると、色々言いたくなるのをこらえることもあります。

 子どもの習い事は楽しんでやるのが一番だと思いますが、ある一定のレベル以上になると、結果も求められてきますよね。私自身もそうでしたが、母親からダメ出しをされたり、できないことで怒られたりすることもあり、しょっちゅう親子げんかをしていました。つらいことがあっても、フィギュアスケートが心底好きだったから続けてこられたので、子どもが本当に好きなことを見極めて、させてあげたいと思っています。

夢は全日本フィギュアのジャッジ席に座ること

 私自身は、資格試験を取ることが楽しいタイプ。母から「手に職を付けるといいよ」と言われて育ってきたのも大きいかもしれません。これまでは医療事務やヨガインストラクターなどの資格を取得しました。勉強しているうちに資格を取ることが楽しくなってきました。フィギュアスケートの審判の資格は、フジテレビ在職中の2013年に取得しました。毎年、地方のブロック大会でジャッジをしています。今は、さらに大きな大会で審判ができる上の資格取得に向けて勉強中です。忙しくてまとまった時間が取れないのですが、すきま時間にルールブックなどを広げて勉強しています。選手時代には体にすり込まれていたルールも、いざ言葉として覚えるとなると大変で苦労していますが、いつか全日本選手権のジャッジ席に座ることが目標です。

 新たな挑戦として、2020年11月にYouTubeチャンネルも開設しました。現役時代のメイクの再現、フィギュアスケーターの持ち物紹介、元スケーターの仲間を招いてのトークなど、元スケーターだからこそ伝えられる、フィギュアスケートの舞台裏を発信しています。

 テレビ局で培った「人に伝える」経験を、YouTubeで役立て、テレビでは伝え切れないフィギュアスケートの魅力をたくさんの人に伝えていけたらと思います。

取材・文/中島夕子


中野友加里
中野友加里 1985年生まれ。主な戦績に2005年GPシリーズNHK杯優勝、同グランプリファイナル3位など。現役時代は国内で伊藤みどりさんに次ぐ、2人目のトリプルアクセルジャンパーとしても知られた。体の柔らかさを生かした回転の速いドーナツスピンの美しさに定評があった。早稲田大学人間科学部eスクール、同大学院を卒業後、フジテレビに入社。9年の会社員生活を経て2019年3月に退社。現在はフィギュアスケートの解説やジャッジなど幅広く活躍する他、昨年スタートしたフィギュアスケートの舞台裏を発信するYouTubeチャンネル『中野友加里チャンネル』も好評