強化選手には、合宿の付き添い、遠征費や道具代などをサポート

 スポーツでトップを目指す選手の親となると、遠征の付き添いや送迎、遠征費・合宿費・競技に必要な道具代など経済的な負担は相当です。既に、子どもの習い事などで、大変さを実感している親もいるかもしれません。強化選手やその親たちはどうしているのでしょうか?

 「両親がフルタイムで働いていると、宿泊を伴う遠征の付き添いなどサポートが難しいこともありますが、そこは、J-STARプロジェクトのスタッフがフォローします。例えば、親御さんが来られない場合は専任の担当やコーチが面倒を見ますし、逆に、子どもの自立を促せると考えたら、あえて親の付き添いをせずに合宿を行う場合もあります。

 J-STARプロジェクトでは、月1回のペースで合宿を行っていますが、その移動費や宿泊費、競技に必要なウエアや道具代などの費用も支援しています。パラリンピック競技の選手は、選考段階から移動費が対象となり、育ち盛りの選手の体に合わせた器具の交換も無償で提供しています」

スポーツを通して磨かれる「自分を律する力」

 こうしたサポートによって、短期間で新たな競技のテクニックを磨き、成績を伸ばす選手たち。そこには整った環境で受けるハイレベルな指導、そして「トップになりたい」と高い目標を掲げる選手の強い意志があります。

 「トップスアスリートになるには、競技にまい進できる環境はもちろん、精神力を強くするのも非常に大切です。そこで、私たちは、選手たちが自分と向き合う力をつけるプログラムを組んでいます。合宿のない時期はコーチが選手に個別メニューを課し、日誌を書かせることもあります。自分を振り返る習慣が付くと、内省を通して選手の意識が変わっていきます」

 選手たちの「意志の強さ」に、驚かされることがあると品治さんはいいます。ある選手は自分の平常心を保たせるため、栄養バランスの整った朝食をルーティンで食べ続け、その理由について「いつもと同じことをしているから、大きな大会でも練習と同じように力が出せる」と説明したそうです。自分の「勝ちパターン」を見つけて、当たり前のこととして自分を律する。大人顔負けのプロ魂です。

 「スポーツを通して培われた力は、スポーツ以外の場面でも役立ちます。それは引退後、社会に出てからも同じはず。子どもの頃からスポーツに打ち込むと、その後の人生に融通が利かず厳しいものになると思われがちです。しかし実際には、例えば会社員として仕事をすることになっても、選手として常にPDCAを回していたことや積極性が生かされ、結果を出すことができるのではないでしょうか

7人制ラグビー競技スクラム練習(写真提供:日本スポーツ協会)
7人制ラグビー競技スクラム練習(写真提供:日本スポーツ協会)