子どもたちがバラエティー番組の「ひな壇」タレントのように自由にトークを展開する「MC型授業」や、掃除の時間に曲を流し、サビでダンスを踊る「ダンシング掃除」など、斬新な授業が話題の東京学芸大学附属世田谷小学校の沼田晶弘先生。「ぬまっち」の愛称で知られ、著書やメディアで、そのユニークな授業や子どもの自主性を引き出すコツを発信しています。この連載では、親が気になることや家庭教育へのアドバイスを聞いていきます。今回のテーマはマネー教育。ぬまっち先生は、お金の話は小学生の頃からしたほうがよいと話します。それはどうしてなのでしょうか?

【プロローグ】新連載読みどころ/ぬまっち先生 子の自立心育てる授業
【1回目】ぬまっち先生 笑顔の練習で「ほめられスキル」伸ばす
【2回目】ぬまっち先生 子とのフラットな関係で学びが広がる
【3回目】畑や海外とつながる醍醐味 ICT教育で広がる世界
【4回目】小4が1人ですし店へ お金の価値を知るキラキラ体験 ←今回はココ

50円のモヤシに「安っ」と言ってしまう子。その理由は?

 皆さん、こんにちは。ぬまっちこと沼田晶弘です。皆さんは子どもとお金の話をすることがありますか? ボクの印象では、お金についてよく話す家庭は少ないのではと思います。それは、子どもにはお金のことは気にさせたくないという親心からでしょう。「お金のことはいいから」と言うほうがカッコいいというのもあるかもしれません。

 するとどうなるかというと、子どもの「高い・安い」のジャッジが曖昧になってしまいます。たとえば、スーパーの野菜売り場で「長ネギ1本100円」「モヤシ1袋50円」と書いてあると、子どもは「安っ」と言ったりするのです。いやいや、高級店ならともかく、長ネギが1本100円は高いですよね。モヤシだって20円台か高くても30円くらいでしょう。

 これは子どもが数字だけを見て「何十円や100円は安いけれど、何千円や何万円は高い」とジャッジしているからだと思います。もの自体を見て、その価値に対して高い・安いをジャッジできないのは、普段大人とお金の価値について話す機会が少ないからでしょう

 それが多くの子どもの実態だと思います。

 ボクだってお金の価値について切実に考え始めたのは、お小遣いで買い食いするようになる高校生くらいでした。おなかが空くけれど、お金は限られている状況で、どうしたらいいか考え、100円ちょっとで買える5個入りのクリームパンばかり買っていました。これならおなかいっぱいになるし、節約になるからです。

 それが少し進歩してくるのはアルバイトを始める大学生時代。「バイトの前に1000円のランチを食べたいけれど、そうすると最初の1時間分はただ働きと言うことになるな、それなら500円のラーメンにしておこうかな」と、働いて得られるお金と使い道、得られる価値について考えるように。バイト先で自分が役に立っているという有用感のようなものも得られて、いっぱしの社会人になったような気になるはずです。

 しかし、それは上っ面だけだったと知るのが就職して社会人になってから。責任やプレッシャーをずっしりと感じ、親は給料をもらうのにこんなに大変な思いをしていたのかということをようやく理解するのです。会社や社会全体のお金の流れも分かってきて、ものの価値と値段についてもしっかり考えるようになるでしょう。

 ボクはこれからの時代、それでは遅いと思うのです

東京学芸大学附属世田谷小学校教諭の沼田晶弘さん
東京学芸大学附属世田谷小学校教諭の沼田晶弘さん