子どもにはインプットとアウトプットのタイムラグがある

 かくいう私も、息子に国旗の本をリクエストされた時は、国旗を覚えて描くようになることを、勝手に期待してしまいました。でも、しばらくは本を眺めるだけ。描くそぶりは全く見せなかったので、「そんなものか」と、様子を見ることにしました。

 すると、数カ月後、突然、「僕の好きな国旗はブータン」と言って、ブータンの国旗を描き始めました。しかも、国旗の本を見返すことなく、記憶だけで描いたのです。

 この出来事に、私は非常に驚くと同時に、大人の目線で「アウトプット」のタイミングを考えてしまっていたことに反省しました。子どもには、インプットとアウトプットのタイムラグがあったのです。

 大人になると、仕事でのアウトプットにつなげるために読書をすることが増えます。そのため、読書に対してもすぐアウトプットを求めてしまう思考になっていたようです。考えてみたら、大人だって、旅先で見た風景、おいしい食事、美術館で見た絵画などのインプットに関しては、アウトプットを求めていないはず。

 子どもにとって、読み聞かせや読書は遊びの延長です。子どもはアウトプットなどの成果を期待していません。いつまでも、アウトプットがなされないものもあるでしょう。逆に、十年以上たって、6歳の時に読んだ本がきっかけで、この職業を選んだ、ということもあるでしょう。

 子どもの成長は未知数です。だからこそ、アウトプットを期待せずに、純粋に本との出会いをつくってあげてほしいと思います。きっと、読めば読むほど、本人の中で世界が広がっているはずだから。

 例えるなら、タネをまいている感じに近いと思います。芽が出るかもしれないし、出ないかもしれない。いつか大人になった時に、突然出るかもしれない。

 そうやって、ゆったりとした気持ちでいることが、読み聞かせを親子で楽しむために欠かせない心構えなのだと思います。