人に優しい社会に今こそ変わっていこう

 前ページで紹介したチェックリストは、学校へ戻る子どもたちだけでなく、職場に復帰する大人たちにも通じるかもしれません。自分がつらいとき、大変なときに「助けて」というのは、決して悪いことではないと副島さんは言います。

 「実は、子どもも大人も『助けて』というスキル、援助希求を持っていないんですね。『どんな顔をして頼めばいいか分からない』『助けてなんて言う自分は駄目だ、愛されない』と思っている。僕は院内学級の担任をしていたときに『このゲームのルールが分かんないだよね。教えて』と聞いたり、誰かの手助けをした子どもには『困っている人を助けてあげられてよかったね』と褒めたりしていました」

 「今回のコロナ禍では、子どもも大人もみんなが傷付いている当事者です。そんなときに周囲の人間が、『あなたは一人じゃないんだよ』『今まで通りにできないことは駄目じゃないんだよ』と伝えてあげられれば、人に優しい社会に変わっていくのではないでしょうか。東日本大震災が起きた後にもそうした社会に変わりかけましたが、いつの間にか元に戻ってしまった気がします。今度こそ、人に対して思いやりを持ち、みんながみんなを支え合える世の中に変えていきたいと思っています」

 最後に、副島さんが院内学級で子どもたちに語りかけていた言葉を紹介しました。

 「つらい時期は向かい風。地面に這いつくばって、風が通り過ぎるのを待つといいよ。もうすぐ必ず、後ろから追い風が吹くからね。そのときに両手両足を広げて風に乗れるように、今は力を蓄えておくんだよ

副島賢和(そえじま・まさかず)
昭和大学大学院保健医療学研究科准教授
1966年福岡県生まれ。昭和大学附属病院内学級担当。学校心理士スーパーバイザー。都留文科大学卒業後、東京都の公立小学校教諭として25年間勤務。99年より東京学芸大学大学院にて心理学を学び、2006年から8年間、品川区立清水台小学校教諭・昭和大学病院内さいかち学級の担任を務めた。14年より現職。11年には『プロフェッショナル仕事の流儀』(NHK総合)に出演。著書に『あかはなそえじ先生の ひとりじゃないよ:ぼくが院内学級の教師として学んだこと』(学研教育みらい)、『ポスト・コロナショックの学校で教師が考えておきたいこと 』(東洋館出版社/共著/6月22日発売予定)など。
熊野英一
子育て支援/ボン・ヴォヤージュ有栖川 代表
1972年フランス・パリ生まれ。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。メルセデス・ベンツ日本にて勤務後、米国でMBA取得。イーライ・リリー、コティを経て、2007年に(株)子育て支援を創業。アドラー心理学に基づいた人材育成に関する企業研修や、子育て、働き方、介護、夫婦関係などのセミナー・講演会を手掛ける。『育自の教科書』(アルテ)『家族を笑顔にしたいパパのための本』(小学館クリエイティブ)など著書や取材記事多数。日本アドラー心理学会/日本個人心理学会 正会員。日経DUALの過去の連載はこちら
杉山錠士
子育て情報サイト「パパコミ」編集長
兼業主夫放送作家
1976年生まれ。日本大学芸術学部在学中から放送作家としての活動を始める。長女が年長になるタイミングで仕事を減らして「兼業主夫」へ。家庭での担当は「夕食」「トイレ掃除」「ふろ掃除」その他、洗濯や掃除全般。NPO法人「イクメンクラブ」社員、NPO法人ファザーリング・ジャパン会員。オーナーを務める「旗の台BAL Cero」では地域のパパをはじめパパ友たちが日々集っている。著書に『新ニッポンの父ちゃん~兼業主夫ですが、なにか?~』