コロナで公教育への不安を感じた人も

 最初に、16歳と8歳の娘を育てる杉山錠士さんが副島さんに問いかけました。

 「小学校では長期間の休校が続き、登校が始まっても分散登校、短時間授業からのスタートです。サポートが手厚い私立校もありますが、公立では宿題の内容や、オンライン授業の実施も、自治体によってまちまちだったと聞いています。公立校でもきちんと学べるのか、この先の教育はどうなるのか、不安に感じている人は少なくありません」

 副島さんは「公立校にも素晴らしい点がある」といいます。

 「公的教育の素晴らしい点は『すべての子どもに教育を受けさせる』ということ。現在のコロナ禍でも現場の先生たちは学びを保証するため、どういった授業をするか葛藤し、工夫しています。ただ、子どもたちに負担を強いることは避けたいと思っていても、文部科学省が定めた標準授業時数があるため、そこから外れることはできないんですね。

 私の個人的な意見ですが、今こそ病弱教育の指導要領にある『通常教育に準ずる教育』が役に立つのではないかと思います。この場合、45分間授業が難しければ、内容を精選して教えたり、合科といって国語と社会を併せて教えたりすることも可能です。そうした病弱教育の知見を、今回の事態に応用して、柔軟に対応できるといいのですが」

 また副島さんは「今後は子どもたちが自ら学ぶ力を育てるべきだ」といいます。

 「今回、3カ月という長期間の休校になって、子どもたちは『暇過ぎる』『何をしていいか分からなかった』と。本来、子どもたちにとって長期間の休みは『そんなに休んでいいの? あれもやりたい、これもやりたい』とワクワク、ドキドキするはずなんです。そうしたパッションや自発的な学びを、これまでの教育が奪ってきたのではと反省しています。

 僕が小学校の担任をしていたとき、僕が教室にいても自習時間を設け、子どもたちが一人ずつ45分間の授業で何をするか計画を立て、勉強するようにしていました。一人で勉強する力がないと勉強しませんし、本来は『学力』とは『新しいことを学んでいく力』であるべきです。でも、今は評価しやすいために『学んだ結果の力』を指します。子どもたちがワクワク、ドキドキを自ら追究できる教育に変えていかなければいけません」

「新しいことを学んでいく力」が学力であると副島さん。画像はイメージ
「新しいことを学んでいく力」が学力であると副島さん。画像はイメージ

 アドラー心理学に詳しい子育て支援代表取締役の熊野英一さんも「ワクワク・ドキドキは新しい時代のキーワード」だといいます。

 「今回のイベントではどの回でも、ゲストの方から『何にワクワク・ドキドキするのかを考えよう』といった話が出ています。2回目のゲストだった公認会計士の田中靖浩さんは『これからは(ワクワクする)場に参加する人ではなく、場をつくる人しか生き残れない。まずは自ら動け』、4回目ゲストで曹洞宗僧侶の藤田一照さんは『自分の深淵をのぞけ!』と言っていました。今後は親たちも自分が何をしたいのか真剣に考えるべきだし、子どもたちからもセンス・オブ・ワンダーを奪ってはいけないと感じています」