肝心の「グローバル化」効果も…

3)「グローバル化」効果も限定的?

 「世界標準に合わせて入学時期を9月にすることで、海外留学がしやすくなるという声もあるが、実際は、9月にしたからといって留学する日本人学生が増えることは考えにくい」と話すのは、日本人の米国や英国のトップスクールへの留学を支援する、クリムゾングローバルアカデミー日本法人代表の松田悠介さんです。

 その理由の一つに、留学を阻害する要因としては、「経済的な理由」と「語学力の不足」が圧倒的だからだといいます。「グローバル化のためには、まずは奨学金制度の拡充や、英語教育の抜本的改革を進めることが本質でしょう」と松田さんは言います。

 留学先にも注目。欧米のように9月入学ではなく、最近はオーストラリア(1月入学)、ニュージーランド(2月入学)、フィリピン(6月入学)、韓国(3月入学)などの留学先も人気で、それぞれ入学時期が異なり、必ずしも欧米基準の9月に合わせる必要がないとも言います。

 松田さんは、9月入学に移行することで海外からの留学生を受け入れやすくなるかどうかにも言及。「現在は、日本の大学等の高等教育機関で学ぶ海外留学生の出身国として、中国が41.4%、ベトナムが20.1%、ネパールが7.3%、韓国が7.0%で、それぞれが、9月や4月、3月などとバラバラの時期に入学している。一律で9月入学に移行しなくても留学生の受け入れは可能」と指摘します。

 2019年の世界大学ランキングでは、東京大学が36位、京都大学で65位と、上位に食い込む日本の大学は非常に少ないのが現状です。「海外から見た、日本の大学で学ぶ魅力を上げることも急務。入学月を変更するよりも前に、教育の質を高めることのほうが優先順位が高いのでは」(松田さん)

 「#9月入学本当に今ですか?」プロジェクトでは、議論の延期を訴えるべく署名活動を行い、5月28日12時30分の時点で5000人を超える署名が集まりました。

 「私たちは、9月入学を否定するわけではない。グローバルスタンダードに合わせて変化することも重要。でも、仮に今、9月入学に移行しても、新型コロナウイルス流行の第2波、第3波が起きれば、また休校となるかもしれない。これ以上学ぶ時期を遅らせるのではなく、まずは教育のオンライン対応や学びの質向上など、優先順位の高い課題にスピーディーに取り組むことが大切。コロナが落ち着いた後に、議論をしっかり行った上で9月入学を検討すべきではないか」という「♯9月入学本当に今ですか?」プロジェクトチームの総意を訴えました。

取材・文/西山美紀 イメージ写真/PIXTA