あなたは、自覚する以上に疲れています

 不安は、エネルギーを非常に消耗する感情です。長期化する戦いのときに指揮官が最も注意するのは、隊員たちの「疲労」です。実は、危機が始まる当初は「がんばらなきゃ」と、やる気でなんとかなる。問題は、状況が落ち着いたころ。がくっと調子を崩す人が増えるのです。ストレスが蓄積することによる疲れは、イライラ、不機嫌、無気力といったかたちで出てきます。そういうときにあなたは、もっとしんどい状況の人もいるのに……と自分を責めていませんか。ぜひ、疲れている自分をケアしてください。

もっとしんどい状況の人もいるのに…と自分を責めていませんか。ぜひ、疲れている自分をケアしてください
もっとしんどい状況の人もいるのに…と自分を責めていませんか。ぜひ、疲れている自分をケアしてください

新しいことに挑戦せず、淡々と日常を過ごす

 休校や在宅勤務で家族と過ごす時間が増えて気詰まりになり、友人にも会えない。ストレスを解消する手段がなくなっています。人にとって一番の苦しみは、幽閉されること。だから世界共通の罰は牢屋に入れられることなのです。閉じこもるだけでも、人はつらいのです。

 自分ケアのためには、「やるべきことを決めたら、あとは淡々と日常を過ごす」こと。感染対策のための手洗いや、人との接触を避けるといった必要な行動は実践するけれど、あとは「忘れる」。なお、この機会に語学学習など新しいことを始めようと思っても、疲労がたまっているときには挑戦するのは難しい。むしろ、こういうときは慣れた行動のほうが集中でき、かつ、気分転換になります。

 音楽を聴いたり、心地よい布団にくるまったり、猫の癒やし動画を見るのもいい。大切なのは「理屈系」ではなく、ほっこりする「雰囲気系」の方法を選ぶこと。「大変なときなのにこんな生産性のないことをしているなんて」と罪悪感を感じる必要など、まったくありません。

ルール4 ◆睡眠をとる、癒やしの時間を大切に

不安は疲労を加速させる。いつもより1時間多く眠る。癒やしの時間を持つ自分を労い、肯定しよう

取材・文/柳本 操 イラスト/PIXTA

※日経ヘルス2020年6月号より転載

下園壮太
心理カウンセラー
下園壮太 しもぞの・そうた/防衛大学校を卒業後、陸上自衛隊入隊。心理幹部として多くのカウンセリングを手がける。大事故や自殺問題への支援を基に理論を展開。NPO法人メンタルレスキュー協会理事長。『自衛隊メンタル教官が教える 50代から心を整える技術』(朝日新書)など著書多数
日経ヘルス2020年6月号 肌が輝き、免疫力も高まる!老けない人のおうち習慣7
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