新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言が全都道府県を対象に5月31日まで延長されました。前回の記事に引き続き、国立国際医療研究センターAMR臨床リファレンスセンターの臨床疫学室長であり小児科専門医・感染症専門医の松永展明さんに、親が知りたい質問に答えていただきます。子どもに関わること、子どもにうつしたくないからこそ知っておきたい家庭での注意点などについてお伝えします。

※この記事の内容は5月1日時点の情報に基づいています。

Q1.子どもは感染しても大人に比べて重症化しにくいとみられていましたが、いまもそうなのでしょうか?

A.子どもに関する情報が、少しずつ増えてきました。重症となる子どもが一定数見られ、特に1歳未満は注意が必要です。中国からの報告では、子どもの重症例は全体の5.9%、小さい子どもほど重症となる割合が高いとありました(重症化割合:1歳未満10.6%、1~5歳7.3%、6~10歳4.2%、11~15歳4.1%、16歳以上3.0%)(*1)。この検査の対象は、症状があり血液検査やレントゲンのチェックが必要な子どもが中心です。そのため、血液検査やレントゲンの必要がないごく軽症の子どもは含まれていないと推察されます。日本で検査体制が広がった場合は、より軽症者の診断がつくため、数値は低くなると考えます。とはいえ、重症例が全体の5.9%と聞くと怖いと感じるでしょう。皆さんにできる最も大切なことは「予防すること」です。

Q2.私たちが考える軽症と、医療側の軽症は異なるような印象を受けます。40度近い熱があって、せきが出てだるい状態は、軽症でしょうか? 大人と子どもに違いはありますか? 軽症、中等症、重症の考え方について知りたいです。

A.医療従事者は、まず命を救うこと、後遺症を残さないことを考えます。次に、回復までできる限り本人の症状を和らげることを考えます。その観点から、現在の多くのケースで医療従事者の定義は、命に関わる「最重症」、集中治療室での治療が必要な「重症」、入院が必要な「中等症」、外来で経過を見られる「軽症」となります。今回の新型コロナウイルスも含め、熱が出てつらいのに軽症とされると「なぜ?」と思うかもしれませんが、命を守ることが最優先の考え方であることを理解いただくとよいと思います。

 一般的な疾患での話をしますと、子どもの場合は、症状の訴えが分かりにくいことと大人に比べて重症化するスピードが速いことから、少し予備をとった考え方をします。つまり、入院や集中治療に移行する基準では、より安全を意識して早めに対応することが多いです。

 また、個々の症状に対する患者の感じ方については、哲学的な問題になってくるので難しいです。そのため、本人の訴えに十分耳を傾けながら、呼吸数や酸素飽和度(体への酸素取り込みを客観的に見る指標)、食事摂取の状況など、ある程度客観視できる指標を含めて判断します。

Q3.子育て中の父親です。37.5度以上の発熱が4日続き、保健所に連絡をしました。かかりつけ医に行くように言われ、かかりつけ医に連絡しましたが、病院に来ないで自宅で様子を見るよう言われました。体調が良くならないため、新型コロナではないかと心配です。症状がひどくなるなどした場合、受診すべき見極めの目安を教えてください。

A.持病や喫煙歴など、自分自身が持つリスクを改めて確認しつつ、症状が悪化したときには迷わず受診・相談してください。検査や受診のタイミングは、個々で症状の出方も異なりますので、一概には言えません。呼吸がゼーゼー、ハアハアと苦しくなってきたり、倦怠(けんたい)感が強くなったり、食事・水分が取れなくなったりするのは、相談・(オンライン)受診の一つの目安となります。これは新型コロナウイルスに限らず、他の病気で受診する際の目安でもあります。質問にあるケースでは、症状を把握した上で判断がなされているので、その後変化があった場合に再度相談になると思います。

 自身の健康状態などを入力すると、一人ひとりに応じた新型コロナウイルス感染症に関する情報が得られるサイトもあるので(*2)、必要時に(発熱時にも)利用してください。

■新型コロナウイルス感染症の軽症者等が経過観察(セルフチェック)を行う際に留意すべき「緊急性の高い症状」(厚生労働省の資料による)
※は家族等が以下の項目を確認した場合

〔表情・外見〕

・顔色が明らかに悪い ※
・唇が紫色になっている
・いつもと違う、様子がおかしい ※

[息苦しさ等]

・息が荒くなった(呼吸数が多くなった)
・急に息苦しくなった
・生活をしていて少し動くと息苦しい
・胸の痛みがある
・横になれない。座らないと息ができない
・肩で息をしている
・突然(2時間以内を目安)ゼーゼーしはじめた

〔意識障害等〕

・ぼんやりしている(反応が弱い) ※
・もうろうとしている(返事がない)※
・脈がとぶ、脈のリズムが乱れる感じがする