予防接種は? マスクは?

Q7.子どもの予防接種のためにかかりつけ医に行く必要があると分かっていますが、外出するのが怖いです。

A.現在の外出自粛でいう「不要不急の外出」に予防接種は含まれません。このような時期でも予防接種は必要です。命を落とすような、非常に重篤な病気から子どもを守るために行うものです。外出する機会が少なくなっても、予防接種で防げる病気にいつかかるか分からないので、適切な時期に受ける必要があります。接種を先延ばしにして、予防接種で防げる病気にかかってしまうデメリットは大きいです。しかし、新型コロナウイルスも乳児がかかると重症化しやすい傾向があるので、その時点でのまん延状況も含めて、かかりつけ医に相談するのがよいでしょう。小児科医は十分配慮し、時間や場所をずらした環境を整備していると思います。GOサインが出たときには、恐れずに接種しに行ってください。

 日本小児科学会でも、「保護者と実施者(注:医療機関側)が協力し可能な限り予定通りに実施すべきだと考えます」としています(*6)。

Q8.緊急事態宣言が出され、前回の記事から状況が変わっています。マスクについて改めて教えてください。

A.繰り返しになりますが、くしゃみやせきに含まれる飛沫を直接浴びる可能性があるような状況でなければ、新型コロナウイルスに限らず、マスクによる感染予防の有効性は高くはありません。環境中のウイルスを含んだ飛沫は不織布製マスクのフィルターで、ある程度は捕捉されますが、ウイルス自体はより小さいので、完全に吸い込まないようにすることはできません。

 マスクとは、症状があるときに「他の人にうつさない」ために使うものです。もしくは、医療従事者や飛沫などを浴びる状況のときにも有効です。この場合、不織布マスクを使用します。

 ただ、流行まん延期だからこそ、考えたいことがあります。健康な人がマスクを使用する場合、着用することにより、机、ドアノブ、スイッチなどに付着したウイルスが手を介して口や鼻に直接触れることを防ぐという有効性はあります。この場合は、布マスクで十分です。

 さて、布マスクについて考えてみましょう。不織布マスクに比して、感染を防ぐ効果も広げない効果も低いです。しかし、大きな飛沫の拡散防止や、10~20%でも拡散防止の効果があるとしたら、一つの手段です。また、自分がマスクで相手もマスクなら、自分だけがマスクをするよりも効果を得られる可能性があることや、社会的な安心感にもつながります。マスクをすることで、感染地域に出るという意識づけの効果があるかもしれません。これは、医療業界で行われているゾーニングの効果と似ています。

 まとめますと、「健康な人のマスク着用の実質的な効果は低いため布マスクでも十分」「外出時は意識をもってリスクを低減する」「症状がある場合は外出せず家庭内では不織布マスクを使用する」「濃厚接触者は可能であれば不織布マスクを使う」です。

 メリハリをつけることで、不織布製マスクが手に入らないことに対する国民不安の解消、増加しているマスク需要の抑制、医療機関や高齢者施設などマスクの着用が不可欠な人たちへの供給体制の充実につながります。

 子どものマスクについては、2歳を過ぎると着けられる子も出てきます。かわいいマスクをおとなしく着けられるのであればいいと思います。一方、マスクを嫌がる場合や、気になっていじってしまう場合には逆効果になってしまいますので、着けなくていいと思います。

Q9.感染者が身近にいます。自分も感染している可能性があると思って自粛していますが、3密(密閉・密集・密接)を避けて行動していれば、買い物時など、人にうつすことはないでしょうか?

A.濃厚接触の場合、症状がなくても、可能であれば不織布製マスクをすることが大切です。原則自宅待機が必要なケースです。やむを得ない場合のみ、短時間で必要最低限のものを購入するために買い物に出るか、宅配などを利用することを検討するとよいでしょう。

 感染している可能性がある状態で外出する場合、一般的な装備ではどんなに気を付けていても、感染を広げるリスクはゼロにならないと思います。

Q10.私も子どもも過去に肺炎を患ったことがあります。予防することが大切だと思いますが、特に注意すべきこと、できることはありますか?

A.大切なのは、ウイルスを家の中に持ち込まないことです。つまり、帰宅時に手洗いをすることです。子どもは、心地良い温水で、楽しく手洗いしてみましょう。うまくできなくてもいいです。石けんで手洗いした後に、さらに水拭きしてあげれば、物理的にほとんどのウイルスは除去されると考えます。うがいの効果は限定的ですので、手洗いだけで十分です。また、規則正しい生活をして、よく睡眠をとり、疲れを残さないことも大切です。

<この記事の関連リンク>

(*1)Epidemiology of COVID-19 Among Children in China. Dong Y, Mo X, Hu Y, Qi X, Jiang F, Jiang Z, Tong S. Pediatrics. 2020 Mar 13:e20200702. doi: 10.1542/peds.2020-0702. Online ahead of print.
Epidemiology of COVID-19 Among Children in China
(*2)新型コロナ対策パーソナルサポート(都道府県がLINEと提携)
(*3)厚生労働省「ご家族に感染が疑われる場合 家庭内でご注意いただきたいこと 8つのポイント」
(*4)東京・港区「新型コロナウイルスに感染した親の子どもの居場所を提供します」
(*5)文部科学省「子供の学び応援サイト」
   経済産業省 「未来の教室」
(*6)日本小児科学会「新型コロナウイルス感染症に関するQ&Aについて」

松永展明(まつなが のぶあき)
小児科専門医、周産期新生児専門医、感染症専門医
2003年順天堂大学医学部卒、大学病院・市中病院にて小児・新生児・感染症診療に従事。2017年から国立国際医療研究センターAMR臨床リファレンスセンター勤務。病院・高齢者施設・ワンヘルスの観点から、サーベイランスやWebサイトを構築し、薬剤耐性菌対策に関する情報の見える化に取り組んでいる。

(文/阿真京子 写真/PIXTA)