4月に発せられた緊急事態宣言は、期間が延長され、13の特定警戒都道府県では、これまで通り、外出自粛等の取り組みを継続することになります。その他では再開された学校もありますが、やはり、新型コロナウイルス感染予防のための生活は続きます。大人も子どももやりたいことを制限され、ストレスがたまる生活が続く中、親は子どもの安全をどのように守ったらよいのでしょうか。子どもの防犯に関する研究に詳しく、幅広い年齢の子どもに防犯の知識を教えているステップ総合研究所所長の清永奈穂さんに、コロナ自粛中を安全に過ごすための注意点や、学校再開までに親子でしておきたいことを聞きました。

 「『連休が明けたら学校が始まる』『早く学校に行って友達と会いたいな』と期待していた子どもたち。ところが、多くの学校で臨時休校が延長されることになりました。先の見通しがなかなかたたないなかで子どもたちは前向きになれなくなってきます。『あとどれぐらい頑張ったら、前のような生活に戻れるか』が分からず、今は子どもたちにとっては不条理な状況です。実質3カ月にわたる長い休みは、子どもの安全生活に影響を及ぼします」と清永さんは話します。子どもを取り巻く危機は次の4つだそうです。

1 社会の不安が人間関係に影響

 「最近、社会にギスギスした空気があると感じていませんか? 社会の不安な気持ちがそうした空気となって少しずつ現れています」。清永さんの確認事例では、普段だったら笑顔であいさつする「地域の人」が、散歩する親子の笑い声にいらつき「不要不急なのか、外に出るな」と怒鳴ったということがあります。

 「家の中では、在宅勤務、家事の負担、業務削減による経済的な問題も含めた不安やいら立ちから、夫婦間にギスギスした雰囲気が生じたり、親子ともに学習に不安を感じるなかでモヤモヤを抱えたりすることがあるでしょう」。子ども同士では、学校に行けなかったり、友達と会えなかったりするイライラが関係に影響することも考えられます。「感染症への偏見などからいじめなどが起きるかもしれません」

 近所や地域の人間関係で心配なのは、健康と世代間格差のために起こるギスギスだと清永さん。エネルギーを発散したい子どもが公園や路上で遊び、そうさせている親がいる一方、子どもがウイルスをうつすのではと不安に思う人もいるというようなことがあるからです。他者間のギスギスもせきエチケットを守らない人がいるなどの場面で現れます。

2 自衛に対する意識の低下

 子どもたちは、突然、休校生活に入ったため、はっきりした区切りがないまま、進級しました。新1年生も入学式はできたとしても、そのまま家にいます。

 「いつも親と一緒で守られているため、どの学年の子どもも、自衛に対する意識は低くなっています。さらに心配なのは、規則正しい行動パターンがなくなっている場合、以前はあった防犯力が低くなることです」

 休校前の子どもたちには「月曜から金曜は通学、月・火・水曜と金曜の放課後は学童、木曜日はピアノ、土曜日はスイミング」といった1週間(7日間)のパターンがありました。清永さんは「子どもは、パターンがあるから『この場所、この時間は気を付けなければ』と意識し、安全を確保できていた」と言います。

 「ところが、今、子どもたちは、学校や学童に行くという通常の生活を送れなくなっています。規則正しい生活ができなくなっているために、いつ、どこで、どのような人やサインに、どのように注意しなければいけないかという、安全を確保する能力が低くなっているのです」