新型コロナウイルスによる自粛生活の間、共働き家庭では家事・育児の夫婦の分担をどのようにしていたでしょうか。どちらも仕事があるのに、家事・育児分担は妻に偏りがちという声も聞かれました。立教大学社会学部現代文化学科特任教授で、1980年代からアメリカで父親の家事育児参加について研究し、日本におけるイクメンの変遷にも詳しい石井クンツ昌子さんに、夫婦の家事・育児分担に偏りが起きてしまう背景や、その対策について聞きました。

休校で増えた負担は母親がかぶるという無意識があった

 石井さんは、2月終わりのコロナ休校の報道の際に、子育てに責任を持つのは母親だという考え方が日本ではいまだに根強いことを感じたと話します。

 「あのコロナ休校の報道直後、ニュースの見出しには『ママ悲鳴』『ママが大変』という文字が躍りました。主語はママです。子どもに主体的に関わり、責任を持つのは母親だということが、社会の意識としてあるのです。ここで私が問題だと思うのは、当事者を含め、一般の人たちがこのことをあまり問題視していないこと、休校には母親が対処するのだろうと社会が無意識に捉えたことです。普段は平等にタスクを分担している家庭でも、今回のような急な対応では妻の負担が大きかったのではないでしょうか。でも本来は、パパだって悲鳴を上げ、大変さを共有するべきです」

 イクメンブームを経て、今ではわざわざわイクメンと言われることに抵抗を感じる男性は少なくありません。部下が育児と仕事を両立しやすい職場環境づくりにつとめる「イクボス」を育成し、男性の育児休業の取得を後押しする企業も増えてきています。それでも、社会的には男性が家事・育児に参画することはまだまだ浸透していない、と石井さん。そこにはどのような背景があるのでしょうか。

 「まず言えるのは、今の現役世代は、子どもの頃からの家庭や学校での刷り込みによって、男女の役割分担にとらわれている人がまだ多いことです。それは当事者である働く女性でも同じです。母親だからやらなければと一人でかかえ込んでしまっていたり、夫婦の不公平におかしいと思いながらも、諦めてしまっていたりします」

 「会社でも『男性の役割は仕事、女性の役割は家事・育児+仕事』という経営層や上司の下で働いてきています。そのため、女性が育休を取るときは、周囲も当然と受け止めますが、男性が育休を取ろうとすると、多くの会社では⼤騒ぎになり、いろいろな調整が必要になっているのが現状です。育休取得率が6%を超えましたが、取得期間については7割以上が2週間未満(5日未満が 36.3%、5日~2週間未満が35.1%。2018年度「雇用均等基本調査」より)であることからも、男性の育児がまだ当たり前でないことが分かります」