「知ろう小児医療 守ろう子ども達の会」代表の阿真京子です。新型コロナウイルスの影響で、小中学校が休校となったり、保育園や学童施設は開園するものの室内で距離をとる通達が出たりするなど、普段と異なる状況にそれぞれの心配事があることと思います。小さなお子さんを育てる保護者や小学生のお子さんを育てる保護者から、さまざまな質問が届きましたので、国立国際医療研究センターAMR臨床リファレンスセンターの臨床疫学室長であり小児科専門医・感染症専門医の松永展明さんにお答えいただきました。情報は日々たくさん流れていますが、「子ども」に着目して親が知っておきたいことをまとめましたので、ぜひ最後までお読みください。

子どもの症状が心配。病院では何を診ている?

Q1.子どもの発熱が3日続いた後、熱が下がりました。今回、厚生労働省の目安では4日続いたら受診、とありますが、受診すべきですか? 他の感染症かもしれず、手遅れにならないタイミングを知りたいです。

A.基本的に、熱が下がり、元気であれば受診する必要はありません。現在の状況では新型コロナウイルスよりも、他の感染症の可能性が高いと考えられます。

 新型コロナウイルス感染症における子どもの一般的な症状についてお話しします。

 実は、子どもについての情報は、まだあまり多くありません。家庭内で感染することが多いことと、熱や乾いたせき、だるさを訴える傾向があることが分かっています。鼻水や鼻づまりなどは、あまり多く見られませんが、嘔吐(おうと)、下痢、腹痛などの症状が出るケースも指摘されています。子どもの場合、重症化することはまれで、たいていは1~2週間で回復しています。

 次に、一般的に子どもが発熱し、小児科医が診察するときに、どのように診ているのかというと、まず、年齢や症状を中心に話を聞きます。

 例えば、生後3カ月未満の赤ちゃんが発熱した場合、細菌感染などを疑って、より慎重に検査や治療の計画を立てます。生後6カ月以降の乳幼児は風邪をひきやすい時期のため、ウイルス感染症を疑って診ていきます。その中で、ひどい咳、高熱、腹痛、下痢などの症状を確認して、どんな病気かあたりをつけます。

 医師が診察で大切にしていることは、子どもの状態が重症なのか軽症なのか、今後悪くなっていく可能性が高いのか、です。その際、医師の見立てとともに、家族による「いつもと違う」というものを大切にしています。その上で診察し、検査の必要性を判断します。もちろん検査しなくても診断がつくことも多々あります。

 細菌感染症と診断した場合、抗菌薬で治療します。一方、ウイルス感染症と診断した場合、一部のウイルス感染症を除き治療薬はないため、基本的には症状を和らげる薬を使用したり、栄養を取りゆっくり休んでもらうことなどで対応したりします。現時点で、軽症のコロナウイルス感染症に対して、抗ウイルス薬で治療をすることはありません。

 新型コロナウイルスの目安とされている「37.5度の発熱が4日間」は、小児の場合、該当する例が多くあると思います。これらはおうちで様子を見ることができるものが多いです。一方で、「高熱」は別の認識を持ってください。元気があればよいのですが、ぐったりしている場合は、受診するタイミングを検討しましょう。この際、定期ワクチンを打っていれば重症感染症のリスクは下がりますので、少し安心なさってよいと思います(新型コロナウイルスには今のところワクチンはありません)。

 人間相手ですから、はっきりと明確な受診タイミングはいつかというのは言えません。子どもの一番近くにいて様子を見ている親の判断は、とても参考になります。受診しながらタイミングを学んでいくこともありますし、相談窓口を活用しながら決めていくのがいいでしょう。

Q2.インフルエンザのときは、感染予防のために家の中でも隔離したり、手でよく触れるところを頻繁に掃除したりします。家族が多いとその分、いろいろ気を使います。その際、頭に浮かぶのが一体いつまでやればいいのか……ということ。

 ここまでやって誰もうつらなければ大丈夫そう、ということを知っていると安心できるので、潜伏期間や回復の目安を知りたいです。また、体外にいるウイルスがどのくらい感染力があるのかも、知りたいです。

A.現時点で、新型コロナウイルスの潜伏期間は1~12.5日(多くは5~6日)とされています。感染者は入院治療します。

 発熱やせきなどの呼吸器症状がなくなり、鼻腔や気管などからウイルスを検出できなくなった状況を「治癒した」と判断しています。回復の目安や感染した人の周囲への感染リスクは、ケース・バイ・ケースです。退院後、さらに2週間程度、健康状態を観察しています。濃厚接触したものの感染が確認されなかった人についても、2週間程度、健康状態を観察することが推奨されています。

 新型コロナウイルスは、体外でも感染力があると言われています。感染力のある期間は、インフルエンザウイルスは一般的に数時間と言われていますが、新型コロナウイルスではまだ分かっていません。つまり、接触感染に対する対応も必要になります。

 新型コロナウイルス感染症に限らず、感染症にかかるリスクはいつでも存在します。大事なのは、平時でも自分を守るために必要時に手を洗うこと、他人にうつさないためのせきエチケットや体調不良時にゆっくり休むことに尽きると思います。

 家族の感染が疑われる場合は「家庭内でご注意いただきたいこと 8つのポイント」(厚労省、文末にリンク)を参考にしていただけると理解が深まると思います。

写真はイメージです
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