新型コロナウイルスによる臨時休校。突然の事態に、いつものように働けなくなったり、綱渡りのスケジュール調整になったり、弁当や昼食作りなどの負担が増えたりと、ストレスを感じている親は多いでしょう。一方、学校に行けない、出かけられないことで子どももストレスを抱えます。日常が崩れたことによる小さなストレスが積み重なれば、親子の衝突につながるかもしれません。臨時休校を受けて、親子の心の健康のために、今できることをメンタルヘルス対策の専門家に聞きました。

分からないことだらけの今、不安になるのは自然な反応

 「不安という感情は、未来が分からないときに生じます」と関屋裕希さん(東京大学大学院医学系研究科 精神保健学分野 客員研究員)。今回の新型コロナウイルスについては、ウイルスの感染拡大についてだけでなく、経済の先行きや、自分自身の働き方、子どもの保育園や学校が今後どうなるのか、など分からないことだらけ。不安になって当然の状況だと関屋さんは指摘します。まずは、自分が今、抱えている感情を認識し、それが自然な反応であると受容するのが第一歩だと言います。

 「なかでも臨時休校については、準備期間もないまま突入しました。対処法がセットで示されればよかったですが、『各自で考えてください』という形でした。怒りや不安などの感情が起きるのは当然です。多くの人が緊急事態モードになっています。緊張状態で過敏になっているため、いつもなら気にならない、ささいなことに反応して怒る場面も増えているかもしれません。そうした感情は、自分や自分の大切な子どもを守りたいための自然な反応といえますが、怒りを攻撃という形で周囲に向けてしまうと、家族や周囲の人との関係が壊れてしまいます」

 こんな時期に、家庭で取り組めることはあるでしょうか。

不安を和らげるための7つの手順

(1)家族で大事にしたいことを共有

「まず、家族にとって大事なことは何かを共有し、そのために家族みんなで協力し合うという枠組みを確認します。例えば『家族の健康を守ること』『学校が休みでも、いつも通り新しいことを毎日吸収して学んでほしい』など、大事にしたいことは家族によって異なると思います。前提をみんなで共有することで、親だけが頑張るのではなく、それぞれが持ち場を持てます」

(2)分かっていることに注目する

「不安は『分からない』から生じますが、分からないとひとくくりにしている中にも、『実は分かっていること』『明確にできること』もあります。例えば、現時点で判明している休校期間はいつからいつまでか、生活の中でできる防御策として手洗いがあること、睡眠をしっかり取ることで免疫力がアップすること、など分かっていることにフォーカスすると、少し不安は和らぎます」