ICTツールの進化などで、リモートワークできる環境が整うにつれ、地方移住や2拠点居住といった新しい暮らし方、働き方が広がっています。「地方移住って実際どうなの?」「どんな暮らしが待っているの?」「デメリットはないの?」と知りたいことはたくさん。そこで、2018年に東京から福岡県糸島市に家族5人で移住した、元住宅雑誌編集者の豊田里美さんが、当事者だからこそ言える「地方移住のリアル」を編集者目線でリポート。第5回は、地方移住に伴うお金事情についてお伝えします。

収入面の違いは?

 「東京から福岡に移住した場合、一般に収入は3割減、支出は半減と言われています」。私たちが移住を思い立ち、最初に相談に行った際、「ふるさと回帰支援センター」の方にそう言われました。

 わが家の場合はどうだったのか。結論から書くと、移住前後で収入・支出ともに大きくは変わっていません。支出は若干減りましたが、半分には届かず1割減程度です。けれどもそれはあくまで数字上の話で、働き方やライフスタイルは大きく変わりました

夏休みにキャンプへ。初の連泊にチャレンジ
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 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(2019年)によると、東京の1カ月分の賃金が約41万円(全年齢の平均額、以下同)であるのに対し福岡県は約32万円と2割以上低い水準です。「ふるさと回帰支援センター」で話に出た「収入3割減」もあり得る話だと思います。ただしこれはあくまでも「移住先の企業に転職した場合」の話です。例えば東京の仕事をリモートワークで続けていければ、収入は変わらず生活費は下がり、暮らしに余裕を生み出すことも可能でしょう。

 私たち夫婦の場合は、移住を機にフリーランスになりました。夫はコンサルタント、私は主に編集・ライターで、それぞれ東京の会社と仕事することも多く、世帯収入は移住前の会社員時代からあまり変わりません。仕事がなくなるなど、フリーランスならではのリスクがある一方、時間の融通がきくようになり、育児・家事に費やす時間を確保できるように。日帰りや一泊旅行も増え、夫とふたり、平日にちょっとぜいたくなランチに出かけるなど、楽しみも増えました。