ICTツールの進化などで、リモートワークできる環境が整うにつれ、地方移住や二拠点居住といった新しい暮らし方、働き方が広がっています。「地方移住って実際どうなの?」「どんな暮らしが待っているの?」「デメリットはないの?」と知りたいことはたくさん。そこで、2018年に東京から福岡県糸島市に家族5人で移住した、元住宅雑誌編集者の豊田里美さんが、当事者だからこそ言える「地方移住のリアル」を編集者目線でリポートする連載。第4回は、移住後に後悔しないための、移住先選びのポイントについてお伝えします。

移住から丸2年。今も試行錯誤の連続

三密を回避しながら、田植え体験&田んぼの生き物観察会に参加
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 私たち家族が東京から地方に移住し、すぐに思い知らされたのは、「私たちは何も知らないし、何もできない」ということでした。家庭菜園をしようにも、いつどんな野菜を植えればいいのか、どんな土を使えばいいのかさっぱり分からず。釣りに行っても全く釣れず。キャンプに行ってもテントの設営に2時間半。真夏の真っ昼間に海水浴に出掛け、暑過ぎてテントから出られなかったことも。後に聞いたところ、慣れている人は午前中か夕方に遊ぶとのことでした。「今まで会社員として培ってきたスキルや知識って、自然の前では全く役に立たないね」と、夫と二人でよく話していました。

 移住後丸2年を迎える今も、試行錯誤は続いています。今年は庭木がコガネムシに食べられ、大葉は日を当て過ぎ、硬くなってしまいました。そんな小さな失敗はたくさんあるけれども、幸い東京に戻りたくなるような「こんなはずでは…」という大きな後悔は今のところありません。周りの人間や仕事に恵まれるなど、運が手伝ってくれたこともあります。けれどもそれ以上に、自分たちにとって「ちょうどよい場所」にこだわり、移住先を探したことが大きく関係すると思っています。都会過ぎず田舎過ぎず、メリット・デメリット含めて納得した上での移住なので、想定外のことが起こらなかったのです。

 コロナがきっかけで、地方移住に興味を持っている人も増えていると聞きます。実際、移住関連事業をしている知人たちは、問い合わせが増えたと口をそろえます。一方、テレワークで仕事は続けられるとしても、いざ未知の場所へ移住となると不安や心配は尽きないのではないでしょうか。実際、webで少し検索しただけでも、「移住失敗エピソード」はたくさん出てきます。

 移住後に「こんなはずでは」と後悔することなく、移住後の暮らしをより充実したものにするためにはどうすればいいのか。同じ福岡県糸島市に住む移住仲間で、移住希望者の相談に乗ることも多いという福島良治さんに話を聞いてみました。

 福島さんは3人の子どものパパ。10年半勤めた楽天を退社後、2015年に家族で地方移住し、地元住民と移住者の交流の場を設けたり、地元企業や行政を巻き込んでさまざまな企画を実現したりしています。移住先に溶け込みながら、移住者ならではの目線で活躍している福島さんならではの、実践的なアドバイスを教えてもらいました。