政治も環境も身近になり、子どもたちへの生きた教育に

地元自治会やボランティアなど多くの人の手によって、美しい海岸が守られています
地元自治会やボランティアなど多くの人の手によって、美しい海岸が守られています

―― 「ないなら自分たちでつくろう」マインドの人は、本当に多い気がしています。そして、有益な情報はwebで見つけにくいというのも実感しています。「○○海岸はサーファーが多くて、××海岸は遠浅で子ども向き」とか、本当に欲しい情報は人からの口コミが圧倒的に多い。それから子どもとできる農業体験などのイベントは、広報誌で見つけることが多いです。

福島:自治体発行の広報誌は、地方都市の住人にとって重要なメディアですね。僕が移住して変わったことの一つが、自分が住む土地への帰属意識なんです。人口が少ない地方都市だからこそ、行政との距離がすごく近い。生活にダイレクトに影響するし、選挙もいつも真剣です。神奈川県の横浜生まれで移住前は東京に住んでいましたが、そういった大都市の一人として暮らしていた頃よりも帰属意識が高まり、自分の住む土地への責任感がとても大きくなりました。環境問題も自分事として捉えるようになり、街や海岸のゴミ拾いなど定期的に行っています

―― 政治や環境問題を教科書上のものではなく、自分たちの暮らしにひもづけて考えられるのは、子どもたちにとっても生きた教育になりますね。最後に、これから移住したい人にメッセージをお願いします。

福島:学校を卒業して就職して、通勤に便利だからと住み始めた場所に、なぜかずっと住み続けなくてはならないと思いこんでいる人も多いけれど、本当はみんな、もっと自由に、住みたい場所に住めばいいと思います。結果として移住先が合わず元の場所に戻ることになっても、それは失敗ではなく、経験値が積み上がるだけのこと。次はもっと良い場所が探せると思いますよ。


 移住先で地域に溶け込み、多くの企画を実現している福島さんですが、「東京にいる頃はこんな自分を想像していなかった」と話していました。そして私も、東京にいた頃に比べて移住後の今のほうが、はるかにフットワークが軽く、田植えだSUP(サップ)だといろいろなことに挑戦できている気がします。移住という未知の領域を自分たちで決めて実行したことで、「小さな行動の積み重ねが、後々の人生を大きく変える」という実感につながった。そして移住後の今も、新しいチャレンジでも「やってみよう」と前向きに捉えられるようになったのでは…と思っています。



豊田里美
豊田里美 早稲田大学第一文学部卒。ITベンチャー、住宅系の雑誌・Web編集などを経て、2018年家族5人で福岡県糸島市へIターン移住。現在はフリーランスのエディター・ライターとして、暮らし・働き方・移住等をテーマに活動中。小学生の長男・長女、保育園児の次女の母。Twitter @plumo_s