現在の暮らしとかけ離れていると、移住後の戸惑いも大きい

豊田(以下、――) まずは福島さんご自身の移住について教えていただけますか。

福島:僕たち夫婦はどちらも首都圏出身。東京の大学を出て、そのまま東京の企業で会社員をしていました。移住のきっかけは東日本大震災ですね。子どもたちの健康と安全を守りたいという思いがあり、移住先を探した結果、今の住まいがある福岡県糸島市にたどり着きました。

―― 移住後に「こんなはずでは」と後悔しないためには、まず移住先選びが重要になると思っています。福島さんは移住先選びにおいて、気を付けたことはありますか?

福島:それまでの暮らしから、あまりにかけ離れてしまうのは避けようと考えていました。僕自身だけの希望で言えば、田舎の広大な一軒家に住んで、小学校も全校生徒が5人くらいで……という暮らしに憧れもありました。けれどもそれでは、東京のマンション暮らしだった妻や子どもたちにとって、あまりに変化が大き過ぎ、負担をかけてしまうだろうと。そこで、自然が多くありながら、ある程度移住者や転勤族が多くて流動性があり、「よそ者」を受け入れることに慣れている場所にしようと考えました。やはり、「田舎」と呼ばれる場所特有の密なコミュニケーションは、人によって「合う・合わない」がありますから。

―― 分かります。「移住の失敗」体験談を読んでも、「コミュニティーになじめなかった」というエピソードはたくさん出てきますよね。

福島:「コミュニティーになじめない」は移住の2大失敗の1つですね。もう1つは「働く場所がない」「収入が足りない」といった仕事面での失敗です。これはテレワークの普及によって、今後は解消される部分もあると思います。一方、「コミュニティーになじめない」は、今後も起こり得るでしょう。「田舎の密なコミュニティー」を否定しているわけでは全くないし、移住者であっても地域にすっとなじみ、野菜や魚を分け合ったり、一緒に祭りを盛り上げたりと理想的な関係性を築いている人もたくさんいます。ただやはり、移住前の住まいの雰囲気とあまりに違う場所にいきなり移住してしまうと、ギャップの大きさに戸惑うことが多いと思います。

糸島在住コーディネーター/ECマーケターの福島良治さん。2015年に糸島市へIターン。10年半勤めた楽天(株)を移住に先立ち退職、独立。糸島のさまざまなプロジェクトにて活動中。三児の父
糸島在住コーディネーター/ECマーケターの福島良治さん。2015年に糸島市へIターン。10年半勤めた楽天(株)を移住に先立ち退職、独立。糸島のさまざまなプロジェクトにて活動中。三児の父