ICTツールの進化などで、リモートワークできる環境が整うにつれ、地方移住や二拠点居住といった新しい暮らし方、働き方が広がっています。「地方移住って実際どうなの?」「どんな暮らしが待っているの?」「デメリットはないの?」と知りたいことはたくさん。そこで、2018年に東京から福岡県糸島市に家族5人で移住した、元住宅雑誌編集者の豊田里美さんが、当事者だからこそ言える「地方移住のリアル」を編集者目線でリポートする連載。第3回は、子育て中の世帯の地方移住の成否を左右する、保育・教育事情についてお伝えします。

「わが子に合った園に預けたい」も移住理由の一つだった

今年初の海水浴で、水路を作成中。五感をフルに使う体験をたくさんしてほしい
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 「保育園」は、共働きの家庭にとって大きな関心事です。けれども東京在住時は、子どもに合う環境のいい園に預けたいと思っても、待機児童が多く競争率も高く、とても園を選べるような状況ではありませんでした。結局、長男長女のときは、通える範囲の園を全部書き、何とか受かった園に通っていました。

 そして移住後、移住先の糸島にて、人生3度目の保活が始まりました。移住前に問い合わせたところ、前年の待機児童の数は4人とのこと。東京の状況を考えるとびっくりするような数ですが、希望者は急激に増えてきているということで、保活は慎重に行いました。市役所に教えてもらった人気園への申し込みは避け、また、フリーランスということで優先度が下げられないよう、育児をしながら在宅での仕事を増やしていきました

 同時に、保育園の見学も開始しました。移住先は公立園がなく私立園のみで、それ故に園ごとの特色が強く出ています。モンテッソーリ教育を前面に打ち出している園、タブレットを用いるなど、ICT教育を積極的に取り入れている園、広い園庭での自由な遊びを重視する園……。その中でもわが家は、畑を所有し、四季折々の野菜や果物を収穫し、みそや納豆など発酵食品づくりを行うなど、食育に力を入れている園を選びました。生産者に近く自然豊かな糸島の強みを生かしており、何より単純に食いしん坊な末っ子にとって、楽しい毎日が過ごせそうだと考えたからです。結果、無事に第1志望の園に決まり、元気に通ってくれています。

 「わが子に合った園に預けたい」。誰しもが当たり前に願うことなのに、東京ではかなえることができませんでした。ずっとモヤモヤ悩んでいた保育園問題から離れたいと思ったのも、私たちが地方移住を選んだ理由の1つです。