ICTツールの進化などで、リモートワークできる環境が整うにつれ、地方移住や二拠点居住といった新しい暮らし方、働き方が広がっています。「地方移住って実際どうなの?」「どんな暮らしが待っているの?」「デメリットはないの?」と知りたいことはたくさん。そこで、2018年に東京から福岡県糸島市に家族5人で移住した、元住宅雑誌編集者の豊田里美さんが、当事者だからこそ言える「地方移住のリアル」を編集者目線でリポートする連載。第2回は、豊田さん一家以外に、地方移住を果たした4組の家族の事例を紹介。「仕事の壁はどう乗り越えたのか」という観点で6パターンに分類し、お伝えします。

 日本中どころか、世界中の生活すべてを変えてしまったコロナ。この記事を書いた5月時点で、私たちの移住先である福岡県糸島市も、他の地域同様に自粛生活が続いていました。

 庭でBBQをしたり海辺を散歩したりと、移住前はできなかった息抜きができることに感謝しつつ、それでも、家族5人全員がずっと家にいる環境に、時々息が詰まりそうな思いも。

 ただ、仕事環境については、子どもたちが休校・登園自粛で家にいることを除くと、大きな混乱なく対応できたように思います。私たち夫婦二人とも、移住をきっかけに独立し、リモートワークをメインに働いていたからです。今回コロナがきっかけで、いやが応でもリモートワーク環境になった人は多いと思います。リモートワークでできる仕事が増えれば、仕事にとらわれずに居住地を決めることができます。きっとコロナ後には、やりたい仕事も、かなえたい暮らしも両方を諦めずにすむ時代がやってくるはず……。そんなことに思いをはせつつ、今回の記事では、移住と仕事について、私たち自身の経験の他、地方移住を果たした4組の家族の事例をもとに、地方移住に伴う「仕事の壁」の乗り越え方について考えたいと思います。

移住がきっかけで、夫婦ともに独立することに

 「東京じゃないと、面白い仕事はできない」

 移住前の私はそう思い込んでいました。東京での共働き育児に疲弊し、地方での暮らしに魅力を感じ出してからも、「仕事があるから、無理だよね」と諦めていました。

 前回記事の通り、私たち一家は結局、曲折を経て移住を決断しました。そこに立ちはだかった大きな壁は「仕事をどうするか」です。まず夫は転職エージェントにコンタクトを取り、転職に向けて情報収集を開始。東京でのキャリアをベースに、移住先での転職についてエージェントに相談し、いくつか転職先候補を見つけることができました。しかし「就職はしようと思えばできる」という自信が、逆に、夫がひそかに持っていた独立への思いに火をつけることになったのです。移住して生活コストが下がることも後押しとなり、結局夫は転職せず、移住と共に独立することになりました。

 一方の私は転職しなくてはと思いながら、移住前に第3子を出産したこともあり、慣れない土地で乳児を抱えての就職をちゅうちょする気持ちがありました。加えて、移住後に上の子たちが不安定になることも想像できたため、ひとまず就職は後回しにし、在宅でフリーランスの仕事を開始しました。夫と違ってなし崩し的に独立することとなったのですが、気になる場所や集まりに飛び込み、人との縁をつないでいくことで、今はやりがいを持って働いています

直売所の菜の花摘み放題へ。移住して食材の旬に敏感になった
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