子どもがひきこもってしまったら、親はどうしたらいいのでしょうか。今回は支援者に話を聞きました。NPO法人パノラマ代表理事の石井正宏さんは、ひきこもり当事者や親の支援を20年以上担ってきました。近年は高校と連携して、生徒に社会参加の機会を提供し、「ひきこもり予備軍」をつくらないための活動などにも取り組んでいます。石井さんに支援の実態や、将来のひきこもりを防ぐために親が今できること、子どもがひきこもった時の親の心構えなどを聞きました。

無理に引き出そうとしないで

 「子どもがひきこもっても頼るべき行政組織や支援者、医療機関は用意されており、親が情報を持つことができれば、パニックになったり、絶望したりせずにすむのではないでしょうか」とNPO法人パノラマ代表理事の石井正宏さんは言います。

 政府は都道府県や政令指定都市に「ひきこもり地域支援センター」を設けています。同センターでは、相談対応や家庭訪問を通じて当事者の状態を把握し、必要な場合は、医療機関や生活困窮者向けの窓口、ハローワークなどの専門機関につなげます。

 各市町村が個別に相談会を開いたり、ひきこもりを脱して外に出始めた人の「居場所」を設けたりもしています。また当事者同士が自発的に集まり、交流する会なども開かれています。石井さんが設立したNPO法人パノラマも、本人と親の相談に応じるほか、「居場所」や地域住民との交流の場を提供しています。

 ただ、「福祉の枠組みでは対応しきれず、親の経済力頼みになっているケースも多々ある」と石井さん。職員の理解不足から、ハローワークで「なまけてはだめだ」と当事者が説教された、相談窓口で「育て方が悪かったせいだ」と親が責められた、といった話も後を絶たないといいます。

 行政の支援に失望した親が、ひきこもりの子を、本人の同意なしに施設へ連れ去る「引き出し業者」に委ねる。そんな事態も起きています。しかし本人にとって、無理に引き出されるのは親が考える以上に恐ろしいことだと、石井さんは解説します。

 「当事者は自分自身に絶望し、外の世界に生きる道があるとは到底思えなくなっています。親や業者が無理に引き出そうとするのは、子どもにとって崖っぷちで背中を押されるのと一緒。『殺される』と思うほどの恐怖なのです」

 ひきこもった本人が、自分からSOSを発することはほとんどありませんが、石井さんら支援者は、少しずつ当事者と関係をつくり、無言のニーズを察知して、外へ出る道を探っていくのです。

将来ひきこもらせないために与えたい「資本」とは

 では、子どもを将来ひきこもらせないため、親にできることはあるのでしょうか。