「ひきこもり予備軍」を地域へつなぐ

 正社員の親や教師とだけ接していると、子どもの「あるべき大人」のストライクゾーンは狭くなってしまいます。「フリーターなんてダメだ」「あの仕事はおまえにふさわしくない」などと、親が価値観を押し付けるのも同様です。

 「ストライクゾーンの狭い子どもは、少し道を外れると『自分はもうダメだ』と思いがち。ひきこもった後も『親と同じ道に戻らなければ』と自分を追い詰め、外に出るハードルを上げてしまいます

NPO法人パノラマ代表理事の石井正宏さん(写真提供/石井さん)
NPO法人パノラマ代表理事の石井正宏さん(写真提供/石井さん)

 石井さんが代表理事を務めるパノラマは、高校内に生徒と地域住民が交流できる「居場所カフェ」を設けたり、地元の中小企業に高校生を送り込む職業体験プログラムを実施したりしています。不登校の子や中退しかかっている若者、職が決まらないまま卒業しようとしている高校生らに、社会にいるさまざまな大人との接点を持ってもらうためです。

 「ひきこもりの人を対象とした政府の支援は、雨漏りの家にバケツを置くようなもの。人数が増えるとバケツからたらいへと、より大きな器を用意しなければなりません。私たちは『ひきこもり予備軍』を社会につなげ、屋根の穴をふさぐ支援ができればと考えています」

取材・文/有馬知子  イメージ写真/PIXTA