予約の取れない“伝説の家政婦”として大人気のタサン志麻さん。フランス人の夫・ロマンさんと共に、2人の息子さんの育児にも奮闘中です。志麻さんの「家族ごはん」に対する思いや考え方などを全6回シリーズでお届けしていきます。第5回は、ママ一人に偏りがちな食事作りの負担を軽くするためのコツや考え方を伝授。料理が苦手なパパでも作りやすいフレンチ流レシピもご紹介します。

どんな小さな家事も夫婦間で共有することが大切

日経xwoman DUAL(以下、略) 毎日の食事作りをママ一人で担うのはとても大変です。夫にも家事を担ってもらえるとグッと楽になりますが、うまく巻き込むコツはありますか?

タサン志麻さん(以下、志麻) もし相手が料理の初心者でしたら、すごく簡単なところからお願いしてみるといいと思います。例えば、自分の帰宅が遅くなりそうなときなどに、「お肉を解凍しておいてもらえる?」と使う食材を準備しておいてもらう。「このレトルトを温めて先に子どもたちと食べてて!」と、すぐできる食事からお任せしてみるのもいいかもしれません。

 夫にも家事を担ってもらわないと、家事の大変さを理解してもらいにくいですし、いつまでたってもやり方が分からないので、どんどん自分一人に負担がのしかかってしまいます。どんな小さな家事であっても夫婦間で共有することがすごく大切だと感じます。

―― そうですよね。一方で、夫に食事作りを任せるようになったら、今度は高い食材ばかり買ってきたり、キッチンが汚れたりと、かえって面倒になるという声もあります。

志麻 そこはもう「しょうがない」と割り切って、完全にお任せしたほうがいいと思います。その分、「今日は楽ができる。好きなことをしよう!」と気持ちを切り替えて、普段できないことをやる時間に充てたほうが、心のゆとりも出るのではないでしょうか。

 私も日々の家事から解放されるために、時々夫に作ってもらいます。彼の定番メニューは、焼きそばやチャーハン、カレーですが、すべてお任せして好きなように調理してもらいますね。作っている途中で口出しすると止まらなくなってしまいそうなので。

志麻さん(右)と、夫のロマンさん(左)
志麻さん(右)と、夫のロマンさん(左)

志麻 彼は料理が得意ではないので、正直あまりおいしいとは思えないのですが(笑)、それはそれで新しい発見があります。例えば、カレーに入れる野菜って乱切りが多いと思いますが、彼が作ると別の切り方で、口に入れたときに「こういう食感になるんだ!」と新鮮な驚きがあるんです。パートナーに作ってもらった料理がたとえ微妙なものだったとしても文句を言わずに楽しんでみると、自分も気がラクになりますし、本人の意欲にもつながると思います。

―― 料理が苦手なパパでも簡単においしく作れるメニューはありますか?

志麻 書籍『志麻さん式 定番家族ごはん』で紹介した「豚肉のハヤシライス」は作りやすくて失敗が少ないかなと思います。しっかりと玉ねぎをいためて甘さを出してあげた上に、カットトマトで酸味をプラスすることでバランスが取れ、おいしく出来上がります。味付けもケチャップ、中濃ソース、コンソメとシンプルなので、時間もかからず、簡単にできると思います。

ケチャップの甘味で子どもが食べやすく、「料理初心者のパパでも作りやすいのでは」と志麻さんがおすすめする「豚肉のハヤシライス」。レシピは4ページ目で紹介します!