予約の取れない“伝説の家政婦”として大人気のタサン志麻さん。フランス人の夫・ロマンさんと共に、3歳・1歳の2人の息子さんの育児にも奮闘中です。志麻さんの「家族ごはん」に対する思いや考え方などを全6回シリーズでお届けしていきます。第1回は、「忙しい子育て家庭にぴったり」だというフランス家庭料理のコツや、フランス人の食に対する考え方について聞きました。志麻さんの簡単おいしいレシピも紹介しますのでお楽しみに。

フランス家庭料理はおいしいのに手間がかからない

日経DUAL編集部(以下、――) 書籍『志麻さん式 定番家族ごはん』では、時短に役立つフランス流のさまざまなレシピやワザが紹介されています。本書の中で志麻さんは「フランス料理は簡単で手間がかからず、忙しい子育て家庭にぴったり」と言っていますが、なぜでしょう?

志麻さん(以下、敬称略) フレンチというとレストランで食べるフルコースをイメージして、「難しそう」と思われるかもしれませんが、私がおすすめしたいのは素朴でシンプルな「フランスの家庭料理」なんですね。

 フランスの家庭で日常的に作られるのは、お肉やお魚のメインディッシュに、ゆでた野菜などが付け合わせとして添えられるスタイル。スープが出ることもありますが、日本のように一汁三菜を基本としているわけではありません。

フランス家庭料理は子育て家庭にぴったりと話すタサン志麻さん
フランス家庭料理は子育て家庭にぴったりと話すタサン志麻さん

志麻 付け合わせの野菜の調理法もシンプルで、ゆでただけのじゃがいもが食卓に並べられることもよくあります。日本だと、じゃがいもはポテトサラダにするなど、野菜に何かしらひと手間加えて出されることが多いですよね。でも、フレンチではメインの味を濃いめに付けることが多いので、むしろ付け合わせには味付けをしないことも。素材そのままのほうが味のメリハリも出ますし、全体としてのバランスがいいんです。

―― なるほど。メインと付け合わせという2品なら、品数が少なくて作る側としては助かりますが、栄養バランス的にはどうでしょう?

志麻 一汁三菜が良いとされる日本人の感覚からすると品数が少なく感じてしまうかもしれませんが、付け合わせで野菜をしっかりと取るので栄養のバランスが悪くなるということはありません。1食で栄養が取れなくても、1日の中で取れればいいので、もしランチで足りないと思ったら、夕食は野菜を多めにするなど調整します。

 品数が少ないということは、おのずと皿の数も減ります。フランス家庭料理は料理を一つの大皿に盛って食卓に出し、各人が取り分けるスタイルが主流。煮込み料理なら鍋ごと食卓に出したりすることもあります。そのほうが温かいまま食べられますし、盛り付ける手間や洗い物も減るので楽ちんです。

志麻さん流フランス家庭料理の一つ、メインの肉と付け合わせの野菜が一皿で取れる「豚肉のトマト煮込み」。レシピは4ページ目で紹介します!